法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 Season17』第17話 倫敦からの刺客

杉下のイギリス時代の相棒ながら、法をふみこえた独自の正義の執行者たる南井。彼に心酔した何者かが、日本へと向かった。
重罰を逃れた犯罪者が次々に殺害されていくなか、イギリスからの旅行客がツアーガイドに連れられて花の里へやってくる……


南井が初登場したエピソード *1と同じく、徳永富彦が脚本を担当。
ゲストキャラクターが少ないのでミスディレクションは足りない感があったが、一般的な刑事ドラマとしては挑戦的なことをやったこと自体を評価したいし、その伏線のはりかたには感心した。けっこう序盤に旅行客が南井の心酔者と示す描写をしたことが、後々まで効いている。
連続殺人と何の関係があるのかわからない排水トラブルや、花の里で杉下がかかわる英語のトラブルといった細部をはじめ、天候や尾行といった刑事ドラマとして平凡な描写まで、事件の構図を解明する手がかりとなっている。
殺された犯罪者のひとりをとおして事件全体の背景をあらかじめ説明しておくというテクニックも、複雑な設定を1時間ドラマにおさめることに効果をあげていた。


監督は橋本一で、そこそこ画面が重厚で、古ぼけた写真を使った演出もいい。
トリックもキャラクターも人工的なストーリーでありながら、その基礎とした社会問題のリアリティと齟齬を感じさせない。
アイデンティティを奪われた過去が、異常な犯罪者を生みだしたという映像作品としての説得力は充分にあった。