法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season21』第19話 再会

謎の爆発音があった村へしらべにいった杉下と亀山。しかしある古い家で背後から棒で延髄を叩かれ、昏倒してしまう。すぐに縄をほどいて脱出したふたりは謎の集団に追われ、ふたてにわかれることに。そして杉下は山をさまようなかで、不思議と聞きおぼえのある名前の男たちと出会っていく……


徳永富彦脚本。白昼夢めいた杉下の物語に、ひょっとして夢オチの類ではないかと思った。目ざめて以降の杉下がいる場面は亀山が映っているところもふくめて、すべて杉下の夢。ふたてにわかれてから亀山が単独で動いているように見える場面は亀山がひとりだけ逃げ出せた現実。
しかし電話をかけることができた亀山が冒頭の少年と再会して、ふたたび謎の集団に追われるあたりで杉下と再会。少なくとも一方だけが見ている夢ではなさそうだと思ったら、爆発物をテロリズム以外の方向に利用する可能性が推理される。なるほど閉塞感ある日本社会らしい真相だ。


歴代の相棒と出会う白昼夢めいた展開が生と死のあわいにある印象をつくりだし、最初に杉下が出会った神戸という男が杉下を自殺志願者と疑ったことが伏線として機能する。
限界集落の若者が将来に絶望している姿は日本社会のアナロジーであり、そこで若者が他人を巻きこみつつ自身が「集団自決」しようと思いつめるところが最近の成田悠輔問題を想起させる。
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若者の絶望をあおって世代の分断を生みだそうとしても、実際に絶望がいきつけば無力感を生みだすだけ。結果的にせよ、そういう社会風刺として読みとれる物語となった。
しかし白昼夢という印象も間違いではなく、杉下の奇妙な偶然を亀山が見ていた夢として処理して、帰ってきた亀山が現代日本におぼえた印象とそれに抵抗したい心情のドラマとして終わった。
徳永脚本らしい人工的なプロットが日本の刑事ドラマには珍しい奇妙な味のショートストーリーとして完成し、シリーズファン向けのサービスも多くて楽しめるエピソードではあった。深夜ドラマでやるようなストーリーだとも思ったが。