法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『昔々、アナトリアで』

検察官や軍警察が、被疑者を自動車にのせて、埋められた死体を探して荒野を走る。被疑者の証言はあやふやで、なかなか見つからない死体に男たちはいらだっていく……


2011年のトルコ映画ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督によるサスペンスで、カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた。

昔々、アナトリアで [DVD]

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約2時間半という長い尺で、描かれるのは捜査の一幕のみ。てっきり死体を見つけられないまま右往左往するコンセプトの物語かと思いきや、けっこうな尺を残して死体が掘りおこされる。


風景は美しく切り取られている。流れていくリンゴやエンジンのかからない自動車など、印象に残る情景はいくつもある。トルコのアカデミー賞を総なめにしただけあって、陰惨な死体の特殊メイクなどもよくできている。
しかし、あまりに語り口が淡々としていて、娯楽としての見どころがつかめない。いかにも刑事ドラマらしい新情報が小出しにされるが、誰も真相に興味がないのか、深掘りしようとしない。不正確だという指摘を無視して調書を作っていく局面も、そこから社会派テーマにふくらませたりはしない。
残念ながらミステリらしい謎解きやサスペンスらしい恐怖を期待するべきではなかった。出産の数日後に予言通りに死んだ女性の謎が、真相によってひっくり返るところだけミステリっぽかったが、あくまでサイドストーリー。