今年も参加しておく。共通ルールは下記のとおり。
話数単位で選ぶ、2013年TVアニメ10選: 新米小僧の見習日記
ルール
・2013年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
ちなみに昨年に選んだ話数は下記のとおり。
話数単位で選ぶ、2012年TVアニメ10選 - 法華狼の日記
『ドラえもん』最強!ころばし屋Z(水野宗徳脚本、今井一暁コンテ演出、田中薫作画監督)
のび太を追って秘密道具2体が衝突し、住宅街を舞台とした小さなサスペンスがはじまる。
娯楽性を重視したアニメオリジナルストーリー。脚本と作画監督は昨年に選んだ話数と同じスタッフ。
無駄のない端正なシナリオで、派手な作画の見せ場をバランス良く配置し、30分いっぱい楽しむことができた。
『ドラえもん』最強!ころばし屋Z - 法華狼の日記
今年は誕生日SPも、作画が良好なだけでなくサービス満点で、イラストレーター丹地陽子によるデザインワークも素晴らしかった。
『ドラえもん』真夜中の巨大ドラたぬき - 法華狼の日記
コンテ演出を手がけた高橋敦史は、他の回で登板した時の仕事も良好。すでにTVアニメや映画の監督をつとめているとはいえ、来年に向けてさらなる活躍が期待できる。
『ゆゆ式』第7話 3学期っ!(ピエール杉浦脚本、博史池畠コンテ演出、田畑壽之/秋谷有紀恵総作画監督、まじろ作画監督、沈宏作画監督補佐、黄瀬和哉エンドカード)
どうしようもない下ネタを思いつくが、いきすぎを自覚して口に出さない。コミュニケーションのため意図的にギャグキャラを演じるという、この作品を象徴する場面だった。
『ゆゆ式』の不憫なゆずこ - 法華狼の日記
それと同じ回でバレンタインデーに頭蓋チョコを求めてしまった少女の痛々しさも、今年にバズワードとなった「クレイジーサイコレズ」の嚆矢だったのかもしれない*1。
『帰宅部活動記録』#7 記録の二十一 封じられた言葉!!/記録の二十二 激闘の果て!!/記録の二十三 サプライズ・パーティー(真藤ユキヲ脚本、伴山人コンテ、守田芸生/矢野孝典演出、古賀誠総作画監督、北原章雄/青木昭仁作画監督)
たった2人のしりとり合戦が、良い意味で『カイジ』の限定ジャンケンを思い出させてくれた。一見して子供の遊びにカードでアレンジを加えただけのようでいて、独自のルールと独自の定石による緊迫したゲームを放送時間いっぱいに展開。
『涼宮ハルヒの憂鬱』の2009年放映版が無料配信 - 法華狼の日記
作品全体も、媒体をメタに遊び倒したり、地上波放映でCMが入る部分に声優ミニコーナーを入れたりと、番組として楽しめるつくりだった。アニメとしては一部作画も一部声優も粗いところもあったが、それもギャグアニメゆえに良いボケとして昇華されていた。
『宇宙戦艦ヤマト2199』第9話 時計仕掛けの虜囚(村井さだゆき脚本、本郷みつるコンテ、羽原信義コンテ演出、前田明寿総作画監督、岸本誠司作画監督)
今年前半を代表するリブート作品において、ヤマトという巨大な宇宙戦艦を舞台として、アンドロイド同士の交流が絵本になぞらえて描かれる。
松本零士作品へのオマージュを感じさせる、叙情的なSFとして完成度が高く、シリーズ全体から見ても重要な伏線が入っていた。
『宇宙戦艦ヤマト2199』第9話 時計仕掛けの虜囚 - 法華狼の日記
作品の主軸となる見せ場の艦隊戦では、敵味方ともに内部分裂をかかえたまま知将ドメルと初戦闘し、限界まで追いつめられた第15話が印象深い。
『宇宙戦艦ヤマト2199』第15話 帰還限界点 - 法華狼の日記
他には、圧倒的な敵艦隊を映像として見せつつ、奇襲することで逆に敵戦力を削るきっかけにした第18話も良かった。
『宇宙戦艦ヤマト2199』第18話 昏き光を越えて/第19話 彼らは来た - 法華狼の日記
『さくら荘のペットな彼女』第21話 誰のせいでもなく雨は降る(小柳啓伍脚本、細川ヒデキコンテ、高島大輔演出、藤井昌宏総作画監督、千葉充/藤部生馬/村上雄/直谷たかし/諸石康太/大木良一作画監督)
最終盤にいたって動機も努力も覚悟もそなわった主人公だが、つかみかけた成功が類似企画という思いがけない陥穽に奪われてしまう。同時に、最も努力を積み重ねながら芽を出せずにいた少女が、ほとんど決定的な挫折に直面してしまう。さらに主人公のつかみかけていた成功が、主人公個人が評価されたわけではないことまで示唆されてしまう。
ストーリー - Episode|『さくら荘のペットな彼女』アニメ公式サイト
創作にかける青春群像劇という作品性を象徴する話数。生活能力のない「ペットな彼女」に見えた天才が高みに立ちつづけ、さまざまな角度から主人公たち凡人がつきおとされていく脚本構成が、感動的な緊密さだった。
学生寮を存続させるための署名活動が挫折しかけているという、連続したエピソードの不穏感をもりあげる演出要素としても必要なエピソードだった。
『さくら荘のペットな彼女』異なる媒体を駆け抜けろ - 法華狼の日記
『凪のあすから』第十一話 変わりゆくとき(吉野弘幸脚本、市村徹夫コンテ演出、皆川一徳/高橋英樹/川面恒介/大東百合恵/小島明日香作画監督)
伝統的な祝祭「おふねひき」を復活させるため奮闘する主人公たちと、ようやく協力することを選んだ地上人。
あくまで淡々とした語り口であり、大きなカタルシスがあるわけではないが、祭りを前にして穏やかに熱をはらんでいく物語が心地よい。イベント回より前話が面白いというアニメのジンクスが当てはまっている。
イベント再開を目指すことでは一致しているのに、恋愛感情ではすれちがっている主人公たちも痛々しいと同時に清々しい。
また、イベントをおこなえるだけの人員が確保できない田舎において、イベント再開にこぎつけること自体がドラマになるところは、田舎在住者として他人事に思えなかった。あくまで現代社会を誇張したファンタジーなのに、よくできた児童文学のように寓意の精度が高い。
『夜桜四重奏〜ハナノウタ〜』第9話 ロクノイチ 前(石川学脚本、寺岡巌コンテ、吉原達矢演出、りょーちも総作画監督、砂川貴哉/普津澤時ヱ門作画監督)
妖怪と人間が共存できる街、桜新町。その街ですら特異な立場とされている半妖3人が出会うAパートと、街を維持するために異世界へ送られた妖怪や人間を追悼する墓地で戦うBパート。それぞれで手描きアニメーションの魅力がつまったバトルが展開される。
TV放映前にOVAで登場したキャラクターについて、アバンタイトルの会話と総集編OPだけで説明を終わらせた無茶はいただけない。しかしAパートとBパートの時系列をいれかえることで、同じ場所で異なる人々の異なる思いが交差するという街らしさを描いた構成は技巧的で印象に残る。
複数勢力の協力で排除される敵が、街のために自己犠牲して葬られたはずのキャラクターという構図も面白い。性格的には小物だが、あたかも靖国神社で顕彰されている英霊のようだ。
『直球表題ロボットアニメ』第12話 サイシュウワ RobotAnime:12.22(石舘光太郎脚本)
人類が滅亡した遠未来で「笑い」という概念で戦争を止めようとするロボット3体というシチュエーションで、声優のアドリブにまかせたシュールな笑いを提供する3DCGアニメ。声優のアドリブらしき台詞からネット配信時のミスらしい部分まで活用し、さまざまな伏線が収束して立派なSFアニメとして完成させてみせた。それでいて独立した1話完結ギャグとしても成立しているという凄み。
同じようにギャグアニメが意外な伏線回収をおこなってSFと化した話数として、『ミス・モノクローム ―The Animation―』第9話も印象深い。
『ファイ・ブレイン〜神のパズル』第3シリーズ 第12話 などと言うと思ったか?(立原正輝脚本、もりたけしコンテ、安藤健演出、田辺謙司/中島利洋作画監督)
パズルが全てに優先する世界観がなぜか成立してしまっている、愉快な教育TVアニメの傑作回。
第1シリーズから主人公にたちはだかっていた敵幹部ヘルベルトが、別の敵組織に移って登場。卑怯な作戦ばかりおこなうのに、一線は守っていると主人公から一定の評価をくだされたり、敗北を自覚した後に自身の良心とインナースペースで自問自答したり……あらすじだけをとりだすとシリアスなのに、全てが空回りしているためコメディにしかなっていないという奇跡的なバランス。
アニメ史に残るような名作ではありえないが、いわゆる美味しい役割を演じきったバカバカしい敵の姿に、気持ちよく笑うことができた。
『惡の華』第七回(全十三回)(伊丹あき脚本、川崎逸朗/平川哲生作画統括、谷津美弥子総作画監督)
全編ロトスコープで1クールを完成させたTVアニメとして記憶に残る。同じ手法を用いているため良くも悪くも各話安定した作品なのだが、さしあたり表現手法の快楽そのものがクライマックスを形成した話数を選んだ。
『惡の華』第七回(全十三回) - 法華狼の日記
表現手法が作品評価に直結する今年の作品としては、セルルック3DCGで一般的な深夜アニメに似た雰囲気をつくりあげた『蒼き鋼のアルペジオ ―ARS NOVA―』も印象深い。むろん深夜アニメ以外では前例が複数あるのだが、作品の商業的な立ち位置から、3DCGが手描きアニメにとってかわりうる未来を感じた。
『蒼き鋼のアルペジオ ―ARS NOVA―』01 航路を持つ者 - 法華狼の日記
他に話数単位で悩んだのは『絶園のテンペスト』第17話。論理的な推理による「女教師(キリッ)」という結論には爆笑させてもらった。しかし鎖部左門という策に溺死するキャラクターの面白味は、昨年放映の1クール目の醜態で成立しており、今年の話数単位に選ぶべきではないと思い直した。
『東京レイヴンズ』第3話、『ワルキューレロマンツェ』第7話、『ラブライブ!』第10話、『絶対防衛レヴィアタン』第11話あたりも印象深い。
今年に終わった『新世界より』の後半と、完結した『京騒戯画』は連続した作品として素晴らしかったため、話数単位では選べない。後者はいずれ感想エントリをあげる予定。『ちはやふる2』等も各話の完成度が安定して高いので、特別に1話だけ選ぶのはためらわれた。