法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

話数単位で選ぶ、2014年TVアニメ10選

今年も面白いTVアニメをいろいろと見てきたので、時間はないが参加したい。
「話数単位で選ぶ、2014年TVアニメ10選」参加サイト一覧: 新米小僧の見習日記
話題にならず埋もれがちな作品をほりおこす意図の企画なため、下記のようなルールがある。

・2014年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

昨年に私が選んだのは下記のとおり。
話数単位で選ぶ、2013年TVアニメ10選 - 法華狼の日記
昨年の集計結果の感想は下記のとおり。
「話数単位で選ぶ、2013年TVアニメ10選」の集計結果が出ていた - 法華狼の日記

ドラえもん』チョコのび太をめしあがれ/青い月夜のリサイタル(千葉美鈴脚本、楠葉宏三コンテ演出、小野慎哉作画監督)(水野宗徳脚本、大杉宜弘コンテ、氏家友和演出、三輪修作画監督

アニメオリジナル回。特に後半のミュージカルが良くて、芸能人ゲストだけで終わらない力を入れた映像作品となっていた。コンテを担当したのは2015年の映画を手がける大杉宜弘監督。
『ドラえもん』チョコのび太をめしあがれ/青い月夜のリサイタル - 法華狼の日記
その先週も、前半は適度なアニメアレンジと素晴らしい作画が、後半は情感あふれるアニメオリジナルストーリーが良かった。
『ドラえもん』動物変身恩返しグスリ/雪だるまが町にやってきた - 法華狼の日記
毎年のように誕生日らしさが薄れているが、やはり中編娯楽活劇としては誕生日SPも良かった。高橋敦史監督には今後も期待したい。
『ドラえもん』地底100マイルちょっとの大作戦 - 法華狼の日記

少年ハリウッド-HOLLY STAGE FOR 49-』第10話 ときめきミュージックルーム(橋口いくよ脚本、長屋誠志郎演出、小園菜穂/新田靖成/野道佳代/竹森由加/谷津美弥子作画監督

とにかく放送時間いっぱいかけて架空音楽番組を放映したことが凄いし、その完成度も素晴らしかった。感想エントリをあげたのは第9話だけだが、その時の好印象を超えた飛び道具で楽しませてくれた。
『少年ハリウッド-HOLLY STAGE FOR 49-』第9話 みっともない輝き - 法華狼の日記
いきなり3DCGのミス・モノクローム現代の音楽番組ならありえそうだし、小顔美少女なのに絶妙な日本人体型のアイドルが歌って踊り、主人公チームは3番目、テンションあがる演歌はたっぷりと、そして最後にソロデビューした先輩が映画宣伝をかねたトークを長時間にわたって展開。どこまでも劇中における主人公の現状を反映した描写でいて、主人公の目指す先を描いた物語としても無理なく成立している。
先述のように全話をとおして素晴らしい作品は避けるべきなのだが、この作品は全話が素晴らしかった上に、それを超えたエピソードを見せてくれた。これ以降の飛び道具は第10話ほどのものはなかったが、それすら第2期に飛躍する余地を残しているのだと感じさせる。

幕末Rock』第3話 熱情(パッション)!バイトするぜよ!(中村能子脚本、川崎逸朗コンテ、佐藤光敏演出、小園菜穂/新田靖成/野道佳代/竹森由加/谷津美弥子作画監督

こちらは番組のほとんどが『情熱大陸』のパロディ。さすがに『少年ハリウッド』ほどではないが、番組パロディとしての要素を押さえつつ、番組には不都合だからと撮影を止めた裏側も歴史ギャグとして爆笑ものだった。それだけでも面白いのに、とにかく劇中ライブのMCが楽しすぎた。「静まるんじゃない!」を初めて聞いた衝撃を忘れることができない。
それでいて主人公が対立する新撰組に潜入し、相手の大きさを実感する重要なエピソードとしても完成されていた。ふざけた要素でまじめな物語を展開する、いかにもこの作品らしい話だった。これも全話を通して素晴らしかったが、2014年でアニメを見ていて一番笑ったこともあって、落とすことができない。

スペース☆ダンディ』第20話 ロックンロール★ダンディじゃんよ(うえのきみこ脚本、山本沙代コンテ演出、伊藤嘉之/稲留和美作画監督

2期に入ってからジャンルパロディの魅力を30分につめこんだエピソードが多く、これも全話をとおして良かった。
たとえば1期最終回の第13話で語られた「宇宙は無駄であふれています 特に無駄なのは いきものの愛だの恋だのといった感情です」へのアンサーとして、第17話で歌われた「すべてがすべて あなたの大切なものは かけがえのないもの」の美しさは印象深い。渡辺信一郎総監督の脚本に名倉靖博コンテ演出で、白昼夢のような世界での出会いを描いた第21話も良かった。
しかしそうした多くの忘れがたきエピソードは、主人公のダンディな一瞬を切りとることで成立していた。この第20話は主人公のボンクラさを失わぬまま、ロック史から引用した反戦ストーリーとして完成されているのが素晴らしい。
『スペース☆ダンディ』第20話 ロックンロール★ダンディじゃんよ - 法華狼の日記
正義の戦争などより、ボンクラきわまりない友人との日々が、どれほど輝いていることか。そのボンクラな友人と実はそんなに仲が良いわけではなく、たがいをよく知らないところも、夢だけでつながる世界のたいせつさを感じさせる。

ハナヤマタ』2組目 ジェラシー・ローズ(吉田玲子脚本、神戸守コンテ、中村近世演出、原田峰文/後藤麻梨子作画監督

ヨサコイに憧れる少女と、その少女に惹かれた少女、そのふたりの関係に巻きこまれて集っていく少女たち。
その少女が集っていくシークエンスが同じようなシチュエーションの反復にとどまっており、ふくらみの足りなさに作品全体としては不満を持っていた。かわりに、その少女が最初に集ってくる第2話には原型ならではの高い完成度があって、パターン化されるのもしかたないと思うほどの面白味を感じた。
良い意味で芸能を軽やかに描くTVアニメが目立った2014年において、学生だからこその重たい芸能を描いた作品を象徴するエピソードとしても印象深い。

普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』第11話 ロコドル集めてみた。(郄橋龍也脚本、こでらかつゆきコンテ、大宅光子演出、片岡千春/手島典子/梶浦紳一郎作画監督

あえてローカルアイドルの広報イベント部分を描いた第11話から選んだ。地に足をつけて目線の高さが同じなのに、あくまで軽やかという作品を象徴するエピソードだと思う。こうしたイベントによく出品していた時期のことを思い出したりという個人的な理由も大きい。
全話をとおしても悪くない、ギャラや集客力の問題を描きながら重くならない良いアニメだった。ただ最終回のイベントかけもちがイマイチだったため、全体評価が下がってしまったのが残念。最終回が良ければ、たぶん逆に各話ベストテンには選ばなかった。

ノラガミ』第12話 一片の記憶(赤尾でこ脚本、高田耕一コンテ、飛田剛演出、水畑健二/青野厚司作画監督

原作が連載中ということもあってか、アニメオリジナルで描かれた最終エピソードの後編。
原作から逸脱しないように、アニメオリジナルのラスボスを用意。ラスボスと主人公との因縁を描くことで、主人公のキャラクターを掘りさげる。さらに主人公と因縁を持つ原作キャラクターに煽られていたという真相を用意して、最終的に原作の対立関係に戻すどころか強化してみせる。理想的なアニメオリジナル最終回のひとつだ。
アニメ表現という意味では最終エピソードの前編にあたる第11話も印象深かった。
『惡の華』ノ挑戦ガ『ノラガミ』デ咲イタヨ - 法華狼の日記

『M3〜ソノ鄢キ鋼〜』第十四話 思ヒ残シオト(赤尾でこ脚本、高田耕一コンテ、飛田剛演出、水畑健二/青野厚司作画監督

1クールを通して、この作品のメインロボットは人間の魂を利用して駆動していることが明かされた。それとパイロットがつながらないと、まともに動かすことができない。そこで最も対照的だった少女ふたりが、記憶を掘りおこすことでつながっていく。そのドラマが最高潮に達した瞬間、ついにロボットが起動する。
ホラーアニメとしてジュブナイルアニメとしてロボットアニメとして、作品に求めた全てが高度に融合した、数少ないエピソードのひとつ。全体を通してパッとしなかった作品だからこそ、この突出した完成度は忘れがたい。
このエピソードが放送された直後、公式サイトの画像がリニューアルされ、このエピソードの少女ふたりが背中あわせになった。2クール目に突入したこともあるが、スタッフも力を入れていた証拠だろう。
アニメ「M3-ソノ黒キ鋼-」公式サイト
比較すると主人公まわりのエピソードが薄すぎて、2クールもかける必要はなかったと思わずにいられなかったのが残念。

ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』第16話 制御不能の野獣たち(キング・リュウ脚本、古賀豪演出、舘直樹作画監督

この作品の2度目の古賀豪演出回にして、2度目の舘直樹作画監督回。
とにかく古賀豪SDらしいアクションに期待してしまったため、『ドキドキ!プリキュア』に裏切られたという印象を見事に払拭してくれた。映像が弱めなこの作品において、全編にわたるアクションが素晴らしい。
作画も、1度目の舘直樹登板は連名で作画監督したこともあってかパッとしなかったが、この回は文句なし。志田直俊の原画も浮かないくらい、全体の荒々しい作画が良かった。
他にこの作品で印象に残ったのはデッドプール回。これまた作画演出ともに良く、ゲストキャラクターの強烈な設定とあいまって印象深い。
『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』第27話 禁断のヒーロー登場? - 法華狼の日記
しかし2014年内にデッドプール回が再び放映され、やはり作画演出ともに文句のない回だったので、各作品から1話ずつ選ぶにはためらわれた。

牙狼〈GARO〉-炎の刻印-』VIII 全裸-FULL MONTY-(村越繁脚本、福山新市コンテ、Kim Min Sun演出、Jang Hee Kyu作画監督

第7話、父親と別行動をとった主人公が獣化して、疑似家族と哀切に満ちた別離をした。その結末において、シリアスな雰囲気を父親がぶちこわしにする。そのぶちこわすにいたった経緯を、1話かけて描いたエピソード。
とにかくサブタイトルが示すとおりのバカバカしい物語。しかし前話と合わせて面白い構成で、意外と下品にすぎず見やすい内容になっている。中世欧州をモデルにしたファンタジー世界において、あまりにも古典的な男女観から導入しつつ、きちんと端々で男性の身勝手を突き放していることや、さまざまな女性のバイタリティを描いていることで、引っかかりが少なくなったのだろう。
DR MOVIEの作画も安定してクオリティが高く、安心して見ることができた。


全体として、やはり2014年は芸能を描いた作品が印象深い年だった。
全話が安定しつつ2015年に持ちこした『プリパラ』や、意外と芸能と舞台裏を描いた作品としても面白かった『LOVE STAGE!!』等、ベストテンには選ばなかったものの印象深い作品ばかり。
それも、あくまで美化して理想を高くうたいつつ、さまざまな問題から目をそらさない、そんな好感を持てる物語が多かった。


なお、例によって全話を押したいような作品は、あえて避けることにした。
最終回だけは駆け足だったものの各話の密度が適度に高かった『棺姫のチャイカ』の1期2期、3DCG表現を最大限に活用しつつ1期単独でも見事にまとめた『シドニアの騎士』、全体をとおして高い作家性をTVアニメとして完璧にパッケージングした『ピンポン THE ANIMATION』、放映時間や期間を拡大しながら濃密さを増して全体の起伏と作画の幅広い良さを示した『ヤマノススメ セカンドシーズン』、潤沢な制作リソースを完璧に娯楽作品として使い切った『神撃のバハムート GENESIS』、2分間にギャグを濃縮した作画アニメ『毎度!浦安鉄筋家族』、等々の作品は忘れがたい。
2015年にまたいだ作品でも『怪盗ジョーカー』や『暁のヨナ』のように安定して楽しめている作品があまたある。アニメはまだまだ面白い。