講談社ノベルスで出た、ライトノベル風味な連作短編推理小説。この著者の作品を読むのは初めてだが、評価に困る内容だった。推理小説というより、ミステリっぽいネタで青少年が犯罪すれすれの状況を楽しもうとする、暗黒ジュブナイルといった感じ。
自由気ままに軽犯罪を楽しむ完全犯罪研究部を、顧問に選ばれてしまった教師の視点で描くわけだが、思っていたより描かれる「完全犯罪」の量が少ない。いくつかのネタは面白かったものの、ついやされる頁数が少ないので厳密な推理や緻密な計画が入る余地が少なく、読みごたえがない。
そして全体をつらぬく物語は、せせこましい動機が凶悪犯罪に結びつくまではともかく、一気にトンデモ気味な戦いに移行してしまう。なんとなく『ひぐらしの鳴くころに』に似ている印象。顧問に秘められたネタは、キャラクター小説という思い込みをひっくりかえす内容なので楽しくはあったが、もっと推理小説らしい隠しかたや転がしかたもあっただろう。
こういう方向性の作品もアリだと思うが、私には合わなかった。