法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダムAGE』第29話 じいちゃんのガンダム

キオ編に入って、新OPは大張正己がコンテ演出。キャラ作画監督千葉道徳で、メカ作画監督大塚健という布陣。
部品ごとにブロックが別れつつも、全体のフォルムは肉感的なMS作画が良い。流れるようなカット割りも良く、キャラやメカのデザインが監督作品と比べて地味なため、逆に大張演出の巧さが素直に出ていた。


日野脚本による本編は、大塚健古田丈司の連名コンテで、アセム編以上にロボットの巨大さが印象づけられる構図が多い。架空の都市を実在する舞台のようにとらえて、立体感ある戦闘を描いていた。
よく動きまわるメカが都市を蹂躙していく映像リソースの物量そのものでも、キオをめぐる環境の激変という展開に映像として説得力を与えていた。
滑走路で出撃前の飛行形態MSを正面からとらえたカットも面白い。極端にピントをぼかせつつも望遠圧縮した、アニメらしいデフォルメが決まっていた。他にも少女の持った風船を使ったカット割りなど、オーソドックスなコンテが多かったこの作品では珍しい小技を多用していた。
単純に線が増えた上に、作画段階でハイライトやディテールを増したメカ作画の質感も良い。ヴェイガンの侵攻と、反撃するガンダムの各装備おひろめといったところは小気味良く提示できていた。


しかし、ロボットアニメのイベントとしては素晴らしかったものの、ドラマは状況の背景がよくわからない。前回に地球連邦上層部を粛清した展開から、全く話が繋がっていない。フリットガンダムを持ち出せたわけは何か、今も軍人だというならそのファッションは何なのか、視聴者の側で補完できなくもないが、物語の流れについていくことが難しい。
冒頭で小刻みに時間が飛ぶが、アセムが行方不明になる前振りは必要だとしても、キオが生まれる場面よりはフリットの立場変化を優先して描写してほしかった。たとえ今後に説明があるのだとしても*1

*1:正直、日野作品はこういうところの説明を平気ですっぽかすから、油断できない。