SF考証の話ではなく、あくまでアニメ版の単純な間違いについて。小説は未読なので、アニメ演出の問題かどうかはわからない。
初めて主人公が時間加速するのは、不良が殴りかかってきた瞬間だった。拳がとどくかとどかないか、映像から判断すると30cmくらいに見える距離の時。
もちろんサスペンス性を高めるための描写ではあろう。目前に危機がせまって逃れようがない瞬間に抜け道が示される、という演出ということはもちろん理解している。
だが、1秒間が1000倍に加速されるので16分以上の余裕があると説明する台詞には、さすがに違和感があった。パンチがとどくまでに、どう考えても1秒もかからない。
ボクサーのパンチは俗に秒速10mという。あくまで俗論であり、トップスピードか平均速度かも不明だが、『アクセル・ワールド』での描写は、ほぼトップスピードにのった状態に見える。
不良がボクサーよりはパンチが遅いだろうことを考慮して距離を50cmと仮定すれば、パンチがとどくまでの時間は0.05秒。それが1000倍に加速されているから、50秒。
アニメでは主人公が3分くらいも会話しているが、そんな時間の余裕はない。
せめて、数歩の助走をつけて殴ろうとしている描写にするべきだった。それでも1000倍程度の加速ならば、現実に戻るまでに不良は1mくらい進むことになろうか。
1000倍という加速が、アニメ描写では無限倍にしか見えない。下手に具体的かつ過大でない数字を出そうとして、逆にはっきりと間違った描写になってしまっているわけだ。