暗い道でヴィラン連合が何かを運んでいた。プロヒーローとのはげしい戦いのなかで、その何かが解放されて姿を消す。
一方、雄英高校で学ぶヒーロー候補たちは、南海の離島にいた。今回はインターンではなく子供だけでのヒーロー活動だ。
期間限定の研修ではあるが本当のヒーロー活動にやりがいを感じながら、若者たちは島の住民と距離をちぢめていくが……
原作では描かれなかった場面をオリジナルストーリーで作った2019年のアニメ映画。TVアニメ4期の放送中に公開されながら、監督と脚本はTVと同じ長崎健司*1と黒田洋介が担当した。
1作目はボンズ制作のアニメ映画にしては作画が弱く、良かったのはクライマックスくらいだった*2。今作も、アバンタイトルが3DCG自動車で描写されたカーチェイスなので期待しづらいかと思ったが、本編の作画アベレージは予想外に高め。
ヒーロー活動といっても日常で人助けをする序盤は動きが少ないが、舞台の特殊性のおかげで通常とは異なる情景を楽しめた。近年のアニメ映画としてはクローズアップも多めだが、全体の作画修正がしっかりしているので悪くは感じない。
敵が現れてからはクラスメイトの個性を発展させて活用し、文字通り個性たっぷりで魅力的なアクションが見られる。特に、尻尾と酸とセロハンのアクションは本編を超えている。麗日の浮遊個性も他の個性と組みあわせて戦闘に寄与。作画でも、麗日がゲロを吐きそうになりかける前後がコロコロ丸くて土煙などもふくめて動きも良くて目を引いた*3。
クライマックスのアクション作画も全般的に良く、そのなかでもさらに上回る中村豊作画*4を堪能できた。中村豊パートのみ目を引いた1作目と比べて満足感が段違い。
物語は、どちらかといえば良い意味で、TVアニメのよくできたアニメオリジナル連続エピソードを劇場サイズに再編集したようだと思った。本編の映像を多く回想として使用して、かなり本筋との連続性が高い。
沖縄モデルと思われる南海の離島を舞台に、まず戦闘ではない人助けをするヒーローという本編では不足していた日常の描写を序盤でたっぷり描いて世界観を拡張。その上で、島全体がヴィランの作戦で孤立することで登場人物をしぼり、クラスメイトひとりひとりが戦闘でも存在感をもって活躍していく。島民も、親が本土で働いている幼い姉弟を中心として、それなりに主体性のある魅力的な人々として描かれている。姉弟以外はあくまでヒーローに助けられるモブではあるが、避難している最中にヒーローにまじって働いている大人がちゃんと描かれている。
そしてクライマックスも、主人公緑谷のライバル爆轟がそもそもヒーローの精神性をもちあわせているか疑問という原作が当初からかかえている問題には目をつぶり、あくまで映画で描かれたちょっと斜に構えた不良っぽい悪友というキャラクターとして見れば、けっこう面白いドラマにもなっている。パラレルワールドではなく本編に合流する外伝ということが念頭にあるので、最終的にクライマックスの選択はなかったことになるだろうと予想しながらの鑑賞となったが、それでも本編で主軸となった継承のドラマのIFとして楽しめた。
姉弟がヴィランにねらわれる理由も明確で見やすい。争奪対象となることで物語を牽引しつつ戦術の説得力も増して、助けられた主人公を助け返すドラマにも活用され、ヴィランが戦闘力はあっても映画1作で消えておかしくない小物となっている設定と密接にかかわることで、物語の説得力を高めている。
*1:ただし第4期から総監督となり、下に別の監督がつく体制になった。
*2:『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~』 - 法華狼の日記
*3:開始1時間3分30秒ごろ。
*4:おそらく開始1時間30分40秒以降。
