法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

アニメの入門編を考えることは難しい

http://d.hatena.ne.jp/unamuhiduki12/20120424/1335216087
まず、ネタかマジかわからない時にマジと思って反応することや、ネタにマジレスすること自体は何ら悪くない。私もよくする。
ラインナップについていうと、『トップをねらえ!』とか私ならば思いついても、個人的には勧めにくいかな。序盤のメカと美少女とスポ根パロディに対して、アニメファンが気恥ずかしく思う一方で、あまりアニメに深くふれていない層が意外と素直にギャグとして楽しめたりする*1。ディープなアニメファンは自意識過剰になって、ライトファンの気分や受容が読みづらいもの。
ただ、そもそも監督別で作品を見ようとする姿勢の時点で、素地がある層へ向けたラインナップという気もする。


とりあえずマジレスにマジレスで返すとして。
ライトファンは監督よりも制作会社で作品の出来を予想して、キャラクターと演じる声優で人気がつく印象がある。そこで長期メジャー作品の、入り口となる中短編かつ話題で出ることが少ない作品を選んでみようかと思った。
むろん長期作品は古いものが多く、たとえば今から『宇宙戦艦ヤマト』シリーズを勧めるのはつらいだろう。しかし主人公が固定されているという観点からいうと、他にもいくつか思いつくものがある。
まず、ミリタリー風味を好む相手には、『装甲騎兵ボトムズ』シリーズを勧めたらどうだろう。物語の発端であるOVA装甲騎兵ボトムズ レッドショルダードキュメント 野望のルーツ』は短くまとまっているし、今の目で見ても映像がいい。シリーズを通してキャラクターデザインが固定されているから、長い年月にわたる長期シリーズにつきものの違和感が少ない。高橋良輔関係作品は幅が広く、関わった若手監督も多いから、スタッフから興味を広げていくにも良いシリーズだと思う。
他にも、新しい作品では映画『COWBOY BEBOP 天国の扉』あたりは、ライトアニメファンに良いのではないかと思う。様々な現代的アニメの見せ場がつまっていて、コストパフォーマンスが高い。見せ場の関連性が低いから*2、一本の作品としてはあまり高く評価していないが、TV版の2クール全話を見る入り口には悪くないと思う。地上波未放映の回には、虚構に踊らされる滑稽な人々を見つめる、渡辺信一郎監督の作家性も感じられる。
SFアニメが続くが、OVAマクロス ゼロもとっつきやすいかな。全シリーズの発端であるおかげで、最も現実と地続きに感じられて見やすい。河森正治監督の作家性が『地球少女アルジュナ』ほど押しつけがましくはなく、社会派な面をもったSFとして見られる。3DCGと手描きのメカが混在し、美しい背景美術といった映像的にも見所が多い。このOVAだけなら結末の問題で勧めるべきか悩むところだが、TVアニメ『マクロスFRONTIER』で結末が明確化された現在なら問題ないだろう。
人気漫画原作のアニメ化だと、とっつきやすいのではないかという考えから、OVAるろうに剣心 追憶編』を勧めてもいいだろう。前日譚なのでTVシリーズを見るきっかけにもなるだろうし*3、映像のクオリティが高いOVAシリーズも2回ある。
キッズアニメから選ぶのもいいかもしれない。映画『劇場版 まじめにふまじめ かいけつゾロリ なぞのお宝大さくせん』は短く話がまとまりつつ、動くアニメの素直な魅力に満ちている。TVシリーズ第1シーズンは相当に質が高いし、監督が交代した第2シーズンや第3シーズンも悪い出来ではない。
他にもキッズアニメから、『ドラえもん』は長編より同時併映短編に安定した良作が多いので、映画『ドラミ&ドラえもんズ ロボット学校七不思議!?』あたりから始まる『ドラえもんズ』シリーズもいいだろう。ドラえもんズが先行して登場する短編映画『2112年 ドラえもん誕生』も良いが、原作者最終公認とはいえ原作漫画収録の設定と異なり、リニューアル後の設定とも齟齬があるため、今になって見せるべきかは悩む。
少年向け作品ばかりだと何なので、OVAおジャ魔女どれみナ・イ・ショも入れておこうか。全13話だが各話完結していて見やすく、描いている時系列はTVシリーズ最終回より前*4。単体でもクオリティの高いTVシリーズを最初から見返すにも良い入り口かと思う。
スポーツアニメから何か選ぶなら、OVA『はじめの一歩 間柴vs木村 死刑執行』あたりかな。主人公が活躍しない外伝的な試合が描かれているが、短い尺に作品の良さがつまっていると思うので。主人公が活躍するTVSP『はじめの一歩 Champion Road』は金曜ロードショー枠で放映されたが、あまり視聴率が良くなかった。TVシリーズは長期にわたった第1期もスタッフを改めた第2期もアニメーションの質が高く、原作に引き伸ばしが目立つ前までを映像化しているので物語も密に詰まっている。
ギャグアニメから手ごろなものをと考えて、ジャンプアニメツアーで上映されたイベントアニメ『銀魂 〜何事も最初が肝心なので多少背伸びするくらいが丁度良い〜』あたりが最近のものとしては良いだろうか。TVアニメのパイロット的な作品だが、DVD化もされているし、TVでも一部の内容をさしかえて放映された。TVシリーズの初期は内容がおとなしめで、だいたい半年くらいたってから暴走しだした。パロディ多目だったイベントアニメから入る選択は悪くないはず。
ホラー作品からシリーズに繋がる何かを考えて、OVA吸血姫美夕』などの名前を思い浮かべた後、映画『劇場版xxxHOLiC夏ノ夜ノ夢を思い出した。TVシリーズは奇妙な味の連作短編で、流して作っている時のProduction I.G作品らしい薄さだが、劇場版は1時間に満たない短編ながら見所が多い。水島努監督はホラー作品を多く手がけるようになっているし、もう一つの魅力であるコミカルな演出も決まっている。


きりのいい10本目まで集まったので、とりあえず終わっておく。
本当に他人をジャンルにひきこみたいなら、あまり悩まず盲目にならず、去る者は追わない姿勢で作品を勧めていけば、それだけで良いという気もする。むろん、勧める作品を選ぶこと自体に楽しみを見いだすことも悪くはないが。

*1:いや、『トップをねらえ!』で試してはいないけどね。

*2:特に作画の見せ場が、リアルな雑踏にアニメ主人公を埋め込んだOP、必然性のない空中戦、高所で素手の格闘戦と、どれも独立した場面になっている。

*3:TVシリーズの序盤は誉めにくいし、中盤以降はアニメオリジナルの引き延ばし展開がつらいが、中盤の質はかなり良い。偽名で細田守監督も参加している。

*4:最終話だけ、少し微妙だが。