法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『アクセル・ワールド INFINITE∞BURST』

仮想現実での思考を1000倍に加速できるアプリで少年少女がアバターバトルしている近未来。いじめられっこのハルユキは、黒雪姫という先輩に誘われて、加速世界で上昇をつづけていた。
そんなある日、ちいさな事故をきっかけにして、仮想現実システムが停止をはじめる。ハルユキたちは敵味方の枠をこえて事態の収拾をはかろうとするが……


2016年7月に公開された、TV版の総集編と後日談の新作エピソードをあわせた劇場アニメ。制作スタッフはTV版から続投。
アクセル・ワールド [ Accel World ]


まず、総集編部分は2クール目を大きくカット。加速世界内で仲間を集め、違う勢力と出会った1クール目を中心に、黒雪姫のモノローグで構成されている。
2012年のTV版は現代の視点でも作画が安定していて線の密度も高かったから、一般的な現代の劇場アニメと比べて遜色ない。先輩視点でまとめたというにはハルユキ視点が多かったものの、サンライズらしい手描きアクションから性的サービスまでテンポ良く見せ場を散りばめていた。


一方、新作部分はというと、かなりダイジェスト感ある内容。未見のOVAで初登場したらしいキャラクターが多く出てきて、原作未読の立場としては心情によりそうことが難しい。
総集編と雰囲気をつなげつつダイジェスト感を抑えるため、たとえば黒雪姫視点を新作部分でもつらぬけば、全体に統一感が出て、時系列のショートカットも自然になったのではないか。
また、現実世界に影響をおよぼすほどの危機に各勢力のマスターが結集するという熱い展開なのに、マスターのキャラクターを立てようと会話劇させるのもマイナス。その時点の主人公を圧倒するほどの強さがあるのだから、素直にその能力を困難にたちむかう映像として見せていけば印象に残っただろうに、尺に余裕がないため活躍部分はさほど描写されない。主人公勢力と協力して突入した緑勢力だけをフィーチャーして、他勢力は台詞を削っても良かったのでは。
多数のキャラクターに日常から戦闘までまんべんなく見せ場はあったし、映画らしいにぎやかな展開ではあったのだが、あくまでファンムービーに徹しているので、思い入れのない観客にはつらい。主人公と関係のないところでの少女同士の交感が物語のポイントになるところなど、過去のアニメ化で感じた原作者の作風らしいところは興味深かったが……