法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

外国映画、字幕から見るか? 吹き替えから見るか?

まず最初に自分の立場を書いておくと、はっきりと吹き替え派だ。美しい映像を文字列が邪魔することに我慢がならないし、字数制限による誤訳や意訳も多い。放映や配信している映画が字幕版であれば見るが、DVD等で選択できるなら吹き替えを選ぶ。
下手な声優が話題性だけで選ばれるから吹き替えが嫌という意見もわかるが、もちろん字幕でも下手な担当者がいるのであって、選択を決定づける根本の理由にはならないだろう。


ここで面白い実験がある。日本テレビ系列の科学バラエティ番組『所さんの目がテン!』の「映画の科学」で行っていた調査だ。
所さんの目がテン!|日本テレビ*1
調査の内容は、「映画」そのものというより、映画鑑賞に対して広まっている誤解や錯覚の検証だ。その最初のテーマが「字幕と吹き替え」のどちらが楽しめるか、だった。
まず、どちらが楽しめるかを街頭アンケートしたり、実際に映画の一部分を見せ比べたりする様子が描かれた。アンケートでは26対4で字幕派が圧倒。実際にイタリア映画『ピノキオ』を鑑賞してもらった6人は5人が字幕に高評価をつけ、1人だけがどちらも良いという評価。
しかし6人へ見せた映画にはトリックがあった。字幕として見せられていたのは、実は英語吹き替えされた字幕版。つまり俳優の生の演技が楽しめるとか、口の動きと声が合っていないとかいった字幕派の主張は、ただの錯覚だったのだ*2
番組は錯覚が生まれた理由にも切り込む。予想範囲内だが、字幕に視線が行くため俳優の演技をよく見ることができず、口と吹き替えのずれに気づかないのだ。視線の動きを計測する機械で調査したというデータによると、鑑賞時間の4割も字幕に視線をやってしまっているという。
つまり俳優の演技を見たいなら、吹き替えもしくは字幕無しで観るべきという結論になる。口の動きが気になるというなら、鑑賞時間の4割ほど俳優から目をそらしておけば、字幕で見ているのと印象が変わらないわけだ。


ちなみに、他のテーマとしては「ネタバレ」すると楽しめなくなるか、鑑賞中に周囲の人間が気になるか。
ネタバレについては、すでにインターネット上で話題になった調査もあるとおり、知らないより楽しめるという結果が出た。
ネタバレにマイナスの効果はなし 研究で明らかに : 映画ニュース - 映画.com
しかし楽しめた理由は、内容が理解しやすかったこと、2回目を観ているような楽しみ方ができることといったところで、ネタバレすることを肯定しているわけではない。ネタバレされなければ、1回目を普通に観て、2回目を観て理解を深めるという多重の楽しみ方ができる。あくまでネタバレされたからと作品を観ないような態度に対して、ネタバレされた作品でも楽しめると告げているにすぎない。
周囲の人間については、気にならないという結果。映画が始まってしばらくしたら、隣の観客が水着に着替えても前の観客がチョンマゲになっても髭男爵が入ってきても気づかない。鑑賞直前は気にかかるが、映画が始まったらスクリーンに集中するので周囲が気にならなくなるとか……いやそれは調査するまでもなく当たり前だろ。

*1:現在はまだ更新されていない。

*2:字幕派の一人は台詞が英語ということすら気づいていなかった。