法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ハートキャッチプリキュア!』第43話 あたらしい家族!私、お姉さんになります!!

主人公は新しい家族の誕生に驚き喜び、支えようと努力する。小さな失敗もあるが、父や友人の助けで切り抜けていく。新しい家族が生まれることで努力が必要になる場合はあっても、それを苦しむ必要はない。
母の代わりに店に立つ描写は、花屋という設定を補強するとともに、結末のブーケで物語をきれいにたたむ。そして店に客として来た別の家族と主人公が知りあう。その家族では、長女が妹に嫉妬心を感じていた。
新しい家族が生まれたため両親の愛を失ったと子供が感じる問題を描きつつ、そういう問題をことさら感じる必要はないのだと主人公の姿で描く。家族に問題が普遍的に生ずることを解決する物語を描きつつ、家族に同様の問題が生じることが普通であるかのよう錯覚させない細やかさが素晴らしい。問題が生まれることが悪いわけではないし、問題を感じないことが人間として不自然なわけでもないのだ。
主人公がゲストキャラクターに対して、「姉」としては後輩の立場と発言するところも良かった。幼いゲストキャラクターの経験を尊重する態度であり、これから姉となる主人公自身も貴重な経験を知ったことも暗に語る。逆説的な言い回し自体も楽しめる。
序盤での、花咲父のダジャレに笑いをこらえる月影ゆりの描写も地味にいい。普段は冷静なキャラクターがつまらないギャグに弱いという定番の描写だが、父が消えて何年もたつという背景事情を考えあわせると、なかなか胸にせまるものがある。


作画監督は爲我井克美。首などの関節部分を細長く描き、顔は少し目が離れていて口が大きな絵柄に、よく特徴が出ている。きちんとデフォルメキャラクターならではの立体感を作画しているし、頭身の高いプロポーションは主人公が年上の存在になるエピソードに適任。ただ、祖母は少しスタイルが良すぎたかな。
コンテは前回に続いて、うえだひでひと。演出処理は別スタッフとはいえ、連投には驚いた。敵の攻撃で裂けた地面をめぐっての描写が良かったかな。前回と同じコンテマンだけに、今回の物語の広い視野や、小道具の印象的な使い方といった差異が強く感じられた*1
敵のクモジャキーが修行で身体強化をしたかと思えば、オーケストラ女神が光線技で対応したアクションにも爆笑。ただ、アクションでキュアムーンライトがムーンライトリフレクションをシールドとして展開した描写には違和感があった。その場にシールドを張れるキュアサンシャインもいるのに、ただでさえ強すぎるキャラクターをさらに強化したら他のプリキュアの存在意義が消えてしまう……

*1:前回の脚本は若手の井上美緒、今回の脚本は成田良美。逆に、今回はゲストキャラクターが「妹」について語る台詞が説明的すぎて、ベテランのアニメ脚本家らしい問題と感じもしたが。