法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『坂の上の雲』第6回 日英同盟

第2部開始。今回は、日露同盟計画が破綻していくまでがドラマの主軸。老人や青年がそれぞれ味わった断絶を描き、日露交渉の代わりの日英同盟が必然であること、後の日露戦争を回避することが困難であったことを間接的に示す。
老いて政治の一線から遠ざかり、外交の勘を失った伊藤博文。ロシアに愛着をいだきつつも断絶を認識して伊藤に進言した広瀬武夫。それぞれウィッテとアリアズナというロシア人と個人的な友好関係を結ぶことで、ロシア全体を敵と感じさせないと同時に国家同士での断絶を強調する。
結末で日本人の作曲した「荒城の月」が一部ロシア人から盗作と受け止められる描写は、ドラマの冒頭で描かれた正岡子規と対になる描写か。


史劇としての見せ所は明確でわかりやすかったが、平和を求める伊藤がロシアとの交渉で朝鮮の意思を無視している無頓着さは、さすがに気になったところ。あくまで当時の伊藤の感覚と解釈してドラマ制作者の認識は別と考えることはできるが……
満州の権益をロシアが狙っていると日本側が認識する描写も、日本も当時から満州の権益を狙っているという認識と合わせてこそ意味があるだろうに、ただの被害者意識でしかとらえられていない。
何より前半で、義和団の乱をただの暴虐であるかのように描いたことは不満が残る。しっかり描く時間がなかったにせよ、もう少し良い演出があっただろうと感じられてならなかった。鎮圧した連合国の中で日本だけが国際法を遵守していたかのような描写も、ある程度は史実通りとはいえ自己愛が鼻についた。


今回、特撮は簡素なものばかりで、合成もよく見ると煙を除いて静止したものが多い。見所はどちらかというと正岡子規の庵や、義和団の乱を鎮圧する描写で使われた大規模なオープンセット。