法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ナツキのいないサマーウォーズ』

「冒頭で、ナツキのかわりにカズマがケンジを呼びに来るわけだよ」
「どういう理由でだ? 結婚という嘘をつくためという理由は使えないだろ……」
「サカエの誕生日に合わせて家族として迎えにきたという理由で充分さ。たとえばケンジはシングルマザー家庭で、都会生活していることもあって、大家族と距離をとって生活していたと」
「ああ、それならケンジの家庭を描く余地もできるかな……」
「それでもって、OZのアルバイトしている2人を後ろから見て、そのキータッチの遅さや判断のまずさにヘタクソとかぶっきらぼうにつぶやく」
「なるほど、後で佐久間がキングカズマの正体を知る描写にも繋がるな」
「後ろからのぞきこんできた時、男か女かわからずにケンジが混乱したりして。耳に吐息が当たったりして」
「……しかし、わざわざカズマが呼びにいくのは御都合主義じゃないか。電話かメールで連絡すればすむ話だろう」
「そこはサカエの配慮ってことにすれば。大家族の中で周囲と距離があって、ケンジと話があう世代の少年と考えれば、同じように家族の一員ではなかった少年を迎えにいくのは自然」
ワビスケとの関係は……そうか、OZがらみという接点ができるか。格闘ゲームに強い理由もはっきりする」
「つまり、大家族の中で周囲と距離がある少年の、三者三様の姿を描く映画になるわけだよ」
「カズマはケンジと反発して独自にラブマシーンと戦い、戻ってきたワビスケ兄さんが原因の一人と知って泣き怒り、家族と協力してラブマシーンを倒し……」
「そして最後にケンジが数学の才能を見せつけることで憧れ、キスをしてハッピーエンド」
いやいやいやいや
「ええ、何か文句でもあるのか」
「キスさせたいなら、せめてカズマが少女とか、ケンジが女性とかの設定に直すべきだろ。ヒロインが年上という設定なら、元の『サマーウォーズ』と同じ構図にできる」
「くだらんホモフォビアだな。恥を知れ」
「いやだって、そもそも女性を客層に設定しないと昨今の一般向け映画は商業的に成り立たないだろ。だから逆に『NANA』とか女性同士のキスシーンならアリなんだろうな」
「ホモが嫌いな女子なんかいません」
「それこそ腐女子への偏見を内面化する台詞じゃねえか!」


「それはさておき。以前の『サマーウォーズ』で最も不要なキャラクターは誰か - 法華狼の日記との整合性はどうするんだ」
「いや、全く同じ考えだよ。映画からカズマの存在を消去して、ナツキをカズマ化しただけだから」
「……どういう意味だ?」
「物語のキャラクターは、その行動によって形作られる。特に、一繋がりの物語でキャラクター性を示さなければならない映画では」
「ああそうか、設定されたキャラクターではなく、物語における役割をキャラクターと考えているのか」
「キャラクターをストーリーとべつべつに消費してもいいけどね。でもそれは映画に必要ということとは少し違う」


「……で、今回の教訓は」
「可愛らしい少年に仮託するのではなく、あらゆる性愛のかたちを正面から肯定する『MIND GAME』をみんなで見よう!」
いやいやいやいや何だその結論