法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『いぬのえいが 特別版』

犬と人の関係を主題とした連作映画。日本テレビ系列で「火曜サスペンス劇場」の後枠に作られた2時間ドラマ枠「DRAMA COMPLEX」で放映された版。録画していたので、今さらながら目を通してみた。
映像自体は気のきいたTVドラマ程度で、泉ピン子が声優を担当した犬が各話の解説をしたり、『伝説の秋田犬 ハチ』の宣伝が最後についていたり、しょせんは2時間ドラマ枠といった印象が強い。俳優が犬の思い出を語る映像は特別版限定らしく、おかげでメイキングを見ているような楽しみがあった程度。
しかし各話は案外とバラエティに富んでいて、もちろんペットとの愛をひたすら賞揚する描写は多いが、人の一方的な思い込みを皮肉る話もある。冒頭の話からして、スポンサーや女優サイドの要求によってペットフードCMの内容が無茶苦茶になるという、TV放映するにはアグレッシブな内容だ*1。泣かせようというあざとさが前面に出た最後の話も、対する批判的な視点が先の話で描かれているから、さほど忌避する気分にならなかった。
ついでに、後に『崖の上のポニョ』の主題歌を歌う大橋のぞみが出演していたことも、少し驚いたな。


本来の作品では話の順番が異なる上、アニメで描かれた回もあったらしい。
『いぬのえいが』がやって来る [犬] All About
しかも上記の紹介によると、愛されているペットの日常を描いた1部と、その後に愛を失ったペットの日々を描いた2部に分けられているという。特別版に残った話でも、人側の勝手な思い込みや、一方的な愛情の押しつけは描かれている。しかしペットがペットでなくなる後を描いた社会的な視野も、できれば見ておきたかった。


なぜ見たかったかというと、私がアニメ好きということもあるが、何より犬が人と同じような感情と知性を持っているかのような描写が、どうしても気にかかったからだ。特に特別版では泉ピン子犬が話の合間に語り続けているので、擬人化された犬で人のありようを間接的に描く物語にとどまっている。アニメでは描けているらしい人と犬の非対称性が、少なくとも特別版では存在しないのだ。
もちろんフィクションだからこその描写であるし、「バウリンガル」で人と犬が実際に会話する話で皮肉も描いている。しかし人が身勝手に獣を擬人化し、代弁者として利用する構図は、イルカに高い知性を見いだす人々の問題とも通じている。
そう、『いぬのえいが』はフィクション映画だが、『ザ・コーヴ』はドキュメンタリー映画だ。やはりニューエイジとの関係性はいずれ批判しておきたい。

*1:そのため、ED後にテロップで架空のペットフードであるという断り書きもされていた。