法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『わんだふるぷりきゅあ!』第1話 はじまりは「わんだふる!」

 動物を飼っている人が多く住んでいるアニマルタウン。そこで犬飼いろはという少女に飼われている犬のこむぎは、飼い主が学校などへつれていってくれないことを悲しんでいた。
 それでも犬飼は朝の散歩だけでなく、帰ってくれば街や広場につれていってくれる。しかし広場にいきなり謎の敵があらわれ、犬飼はこむぎを置いて幼い男子を助けにいってしまった……


 妖精などのファンタジックな存在ではないペットと、人間がともにプリキュアに変身するという鳴り物入りではじまったシリーズ最新作。とはいえ急成長した赤子や、動物を擬人化したような妖精、さらにはアンドロイドが変身するシリーズまであったので、それだけでは独自性を感じない。
 そこで飼い主がいかにもヒロイックに人助けをしようとして、その飼い主を助けるためペット単独でプリキュアに変身して初回が終わるという、視点の意外性で面白味を出していた。もちろん次回以降に飼い主も変身するだろうし、それはOP映像でも明らかなところだが、思考が幼いサポートキャラだけが変身して敵をふりまわす構図は独特の味がある。
 そもそも動物を擬人化させてキャラクター化する企画に疑問があったし、過去の妖精とは異なる現実の動物というにはデフォルメされすぎているこむぎのデザインにも首をかしげたが*1、ここまで動物側の視点を重視した導入であれば逆に許せる。あまりにも幼すぎる思考が、逆に人間のようで人間ではない印象をつくっていた。


 ただ、視聴前から懸念して、少なくとも初回では解消されなかった問題として、現代社会でペットを飼育することの困難は描けていなかった。このようなアニメをきっかけに飼育されたペットが飽きて捨てられる古典的な問題はもちろん、外飼いや生体販売をめぐる議論も反映されそうにない。
 明らかにリアリティラインが低い幼児向け作品なのでペット飼育そのものの倫理的な問題に向きあうのは無理だとしても*2、ペットを飼う時の注意点や責任についてはエクスキューズをきちんと毎回のように入れてほしいところ。たとえば糞尿の処理や狂犬病の注射くらいは描写してほしいところだし、きちんと描けば楽しいエピソードにもできると思う。


 シリーズディレクターの佐藤雅教は『ドラゴンボール超』の演出などを担当してきた。後述のアクションにおけるカメラワークが目まぐるしいところはそのためだろうか。
 キャラクターデザインは内田陽子。西位輝実の弟子筋にあたるらしく、補佐的なキャラクターデザインについていることが過去作品では多い。ノイタミナで第1期の放送が終わった『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』も同様だが、同時期に何クールにもわたるTVアニメのデザインを描き起こすのは大変そうだ。
 パステルカラーだったりメッシュを入れたデザインで独自色を出しつつ、意外と初回はシリーズ初回の水準的な作画。ベテランの爲我井克美と飯田花緒が共同で作画監督をしているためだろうか。背景動画を活用した元気いっぱいのカメラワークは良かった。

*1:初回冒頭のニワトリのリアルな作画を見ると、意図的なようでもある。

*2:とはいえ、この放送枠でTVアニメ化された『クレヨン王国』シリーズの原作では、家畜をめぐる倫理問題が描かれたエピソードもあった。