法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ノーモア・ヒバクシャ〜核兵器のない世界を目指して』

NHK総合で放映された特別番組。生放送で世界における反核の動きを紹介する。
時間が取れないので録画したが、進行のつたなさが目立った。リアルタイムで見るべきだったかも。


まずは、核実験の被害者もきちんとヒバクシャととらえ、日本以外の被害にも広く目を向ける番組作りがされていたことが良かった。
今年にフランス領ポリネシアから起こされた核実験被害者訴訟、カザフスタンセミパラチンスクで1989年に起きた核実験停止要求運動、各国の学生が参加している反核運動、等々が未来の連帯を期待させる。同時に、日本一国の被害者意識に単純化させない。
カザフスタンの国民的歌手ローザ・リムバエワ氏による被爆鎮魂歌『ザマナイ(時代)』は、かなり音響環境が悪そうなのに、流石の歌唱力で圧倒された。しかし原爆実験の映像がPV風に挿入されるのは、個人的にはやめてほしかったな。爆発の映像的な快楽を感じてしまった*1


また、オバマ大統領の演説は重要な前進とは思うが、番組が全肯定したのは危険。番組でも、核兵器をゼロにする条件が整っていないという米国の報告書を提示しているし、実際に被爆者らと会話したモートン・ハルペリン元大統領補佐官も様々な留保をつけて言質を取られないような物言いをしていた。
もっとも、相手国の核放棄を先に求める主張はパキスタン行使も口にしていたが、パキスタンから核放棄への言及が初めてあったという観点から被爆者が評価したりする。
生放送という事情を考慮したり、対話で衝突することを避けたい心情を慮ったり、変化の前後を把握したりという視聴者の理解力も求められているのだろう。あるいは、あくまで番組は一種のイベントであって、報道というより意識喚起を目的としていると考えるべきか。

*1:もちろん、そのおぞましさは理解する。映像に快楽を覚える気分があるからこそ、なおさら自覚して対処していきたい。