ノーベル平和賞を受けてのICANの紹介だが、放送枠は通常通り。それが逆に平和賞以前から取材していたことをうかがわせる。
若者と被爆者たちの“二人三脚” ~ノーベル平和賞の舞台裏~ - NHK クローズアップ現代+
若者と被爆者が協力して世界にうったえていったプロセスを、ICANに対する各国の反応をおりまぜながら見せていく。
番組としては、核拡散防止条約が大国の核兵器占有の肯定になり、歯止めにすらならない現状を説明し、日本も米国に追従したことを説明。
世界の核軍縮はこれまで、NPT核拡散防止条約という枠組みの中で行われてきました。それは、アメリカやロシアなど5か国だけに核兵器の保有を認める一方、削減の義務も課しています。しかし、それにも関わらず、5か国の削減は遅々として進まず、それどころか、新たに核開発に乗り出す国が次々と現れてきました。
一方、ICANの手法は対人地雷禁止条約やクラスター爆弾禁止条約といった前例があり、少しも非現実的ではないことを指摘。
一部の国だけが核保有を認められている現状に不満を募らせた北朝鮮のような国々が核開発に乗り出してきたという経緯もあるんです。このためICANは、非保有国と協力して、核兵器の開発保有使用を一切禁止してしまう国際的な規範を作ることで、核兵器を持ちにくい、使いにくい環境を作っていこうとしたわけです。実はこうした手法は、最近では、対人地雷禁止条約ですとか、クラスター爆弾禁止条約の制定の際にも取られてきました。
しかしながら、最後の識者コメントで、核の傘の下にある日本の現状を現実に位置づけ、ICANを理想に位置づけたことは疑問。
戦後はその原爆を投下したアメリカの核の傘の下に入って、北朝鮮の脅威を前にした現状では、政府は核抑止力に頼らざるを得ないとしています。この核廃絶の高い理想と、安全保障の厳しい現実のはざまで、日本の政府や市民がどのような議論を繰り広げていくのかは、世界の核軍縮の行方にも影響を及ぼすとして各国から注目されています。
米国の「核抑止力」が消えたわけでもないのに、なぜ北朝鮮の脅威が増しているのか、このコメントでは説明できない。むしろ先に引用した「一部の国だけが核保有を認められている現状に不満を募らせた」というコメントこそ、現状には適合する。
もちろん適合する説明が必ず真実というわけでもないが、政府の現状認識や現状説明をそのまま追認することが現実主義ではないという注意は必要だ。