法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『オリバー・ストーンとヒロシマ』

原爆を題材にしたドキュメンタリーを完成させたオリバー=ストーン監督。それにからんで各国の若者や被爆者と交流した旅路をNHKが追う。
基本的にはBSで再放送されるドキュメンタリー『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』の宣伝であり、提起された問題意識を短くまとめただけ。しかしオリバー監督の視点を通して近現代を見つめなおす、良い番組ではあった。
NHKネットクラブ エラー

被爆68年を迎えたこの夏、自らベトナム戦争に従軍し戦争や歴史の真実を追究した『プラトーン』や『JFK』などの話題作で知られるオリバー・ストーン監督が広島・長崎を初めて訪れた。番組では韓国の済州島から始まった今回の旅の全日程に密着し、監督が参加した日米の若者による国際平和学習も取材、最新作のドキュメンタリー映画アメリカではタブーとされてきた原爆投下の真実に迫った監督のヒロシマへの熱い思いを伝える。

旅のはじまりが韓国の済州島ということは、実際の番組では注目されず。どうやら旅路の全ては50分版で描かれるらしいとの情報があった。
「オリバー・ストーンとヒロシマ」9月12日(木)NHK総合で放送予定 - 薔薇、または陽だまりの猫

オリバーが、日本に来る直前に済州島のカンジョン村の海軍基地建設反対運動を取材した時の映像、広島・長崎を終えて沖縄を尋ねた映像を含めた50分版(英語版も作成予定)もNHKで作成中で、そちらの放送予定は決まり次第、お知らせします。

なお、放映された45分版でも、広島で韓国人被爆者の碑に参る監督が映され、若者との交流会で南京大虐殺従軍慰安婦へ言及した言葉が収録されている。交流会の若者に対して、同じように国際派の学生であったオバマ大統領ですら権力にとらわれてしまったと、現代社会に切りこむ意見を述べたりもしていた。
逆に日本側の言葉も被害者視点にとどまらない。監督が広島の被爆記念館におとずれた時も、まず日本の開戦から説明を受けていた。証言する被爆*1も、まず米国への怒りを口にしつつ、開戦した日本に対しても憤る。
米国の加害を見つめようとしつつ、普遍的な視点から戦争をとらえようとする監督。被害者という視点だけでなく、戦争全体を広く問題視しようとする被爆者。それらの意見に対して、きちんとNHKも歴史に向きあいながら伝えようとしていた。内容に大きな違いはないだろうが、50分版も期待したい。

*1:ケロイドを負った体を冷やそうとして川に入ったのに、満潮が遡上して淡水が塩水になってしまったという証言が印象的。聞いているだけで体と心が痛くなった。