法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

やなせたかし作品の思い出

八頭身で描かれた暗い絵柄の絵本『アンパンマン』が記憶にあるものとしては、アニメ『アンパンマン』は別物という解釈をしている。
もちろん、アニメが駄作というわけではない。映画『アンパンマン』の多くは素晴らしい作画アニメで、矢野博之*1コンテは異様に格好良い。しかしそれらはアニメスタッフの功績だ。


やなせたかしは冷酷な作家だ。
その冷酷さが最も表れている作品が、毎日映画コンクール大藤信郎賞を受賞した短編アニメ『やさしいライオン』だろう。母が子に優しく語りかける体裁をとり、一見してありきたりな動物擬人化童話と思わせる。実際、実験アニメの多い印象がある大藤信郎賞作品では、セルアニメで作られ物語性も高く娯楽作品として楽しみやすかった。しかし、最後まで見て、底冷えする投げっぱなしな結末に呆然としたものだ。語りが明るく前向きなままであったことも、結末の冷酷さを強調していた。
歌「手のひらを太陽に」の作詞をしたことも有名だが、後年のインタビューで金のために書いたものとふりかえり、現実では命が平等に扱われることはないと語っている。
もちろん、やなせかたし本人と作品が冷酷な現実を語っているからといって、冷酷さを肯定していると読解するのも拙速ではあるのだが……

*1:トムス制作作品で演出を行っていることが多い。意外なところでは『真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日』第1話と第11話のコンテを切っている。