ステレオタイプに収まりきれなかった要素にある。あえて俗情から導入し、理屈で道筋を固め、しかし感覚でも観念でもない歩みの先に、理論で語ることのできない一瞬があるのだ。
……ということで、いずれ出崎版ブラックジャックをまた語りたい。最新作『あさきゆめみし』が『源氏物語千年紀 Genji』に変わった経緯を思うと、出崎統監督本人が最もハードボイルドな壁にぶつかりゆく卵ではないかと思ったりもするが*1。
ステレオタイプを否定するどころか全く関係ない観点からものごとを提示するのは、あるいはドキュメンタリーの領分ではないかとも思う。森達也氏が主張するほどには、ドキュメンタリー作家の創作性を肯定したくない*2。