法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『大みそかだよ!ドラえもん1時間スペシャル』戦国のび兵衛がんばれ/ドラえもん&パーマン危機一髪!?/星野スミレのひみつの恋

今回は3本立てで、中編の冒険活劇を見せたり、『パーマン』関係の短編をふたつ見せたり。予想外に凄い作画はなかったが、かなり高く安定していたので不満はない。


「戦国のび兵衛がんばれ」は、スネ夫の家宝自慢に対抗して、のび太野比家の祖先を出世させようとする。そこで戦国時代に行ったところ、敵にとらわれた姫を救出することに……
アニメオリジナルストーリーだが、リニューアル初期にアニメ化された原作短編「ご先祖さまがんばれ」*1を原案にしたような内容。あくまでスネ夫への対抗と敵味方を適当に判断する展開がメインだった原案に対して、こちらは過去で出会ったしずちゃんの祖先「しず姫」を助ける奮闘劇がメインとなっていく。
木製の城郭で戦国時代のリアリティを感じさせたかと思えば、ジャイアンの祖先「ジャイ蔵」が忍者として立ちはだかったりもする。ただしジャイ蔵は怪しげな術をつかう忍者ではなく、アニメらしくデフォルメされた殺陣を見せつつも、あくまで勘がするどくて秘密道具に対抗できるというぐらい。気軽に楽しめつつ時代劇は逸脱しない戦国アクションとして、きちんと全体がコントロールされていた。
しず姫は気高く強き女性キャラクターとして魅力的だし、ジャイ蔵も秘密道具に技量で対抗する強敵として印象深い。原案と同じく戦争を怖がるだけの祖先も、姫を救おうとする勇気を途中で見せているから、戦争で手柄をたてることに興味がない原案通りの結末に平和主義の尊さが感じられた。


ドラえもんパーマン危機一髪!?」は、スネ夫ホームシアターに対抗して、のび太は「超巨大スクリーン立体テレビ」を楽しむ。しかし身を乗り出しすぎて、テレビ番組に入りこんでしまい……
もともとミュージアム上映用につくられた短編作品。そのためか、多数の原作キャラクターと共演するプロモーションの性格が強い。原作では時系列として後日談にあたる『ドラえもん』側のキャラクターが、なぜかパーマンの正体や設定を知っているというパラレルワールド的な作りになっている。
大杉宜弘監督らしい元気いっぱいのアニメーションは楽しいし、原作短編「巨大立体スクリーンの中へ」から劇中劇の『パーマン』と共演する展開はシンプルによくできていたが、予想以上の驚きはなかったかな。ただ、『パーマン』の平面的な作画や、奥行きを出さないコンテは、レトロなアニメの模倣として興味深かった。


「星野スミレのひみつの恋」は、ジャイアンから漫画をとりかえそうとして、のび太は「架空通話アダプター」で会話をシミュレーションする。しかしうまくいかず、せめて楽しもうとアイドルとの通話を始めるが……
次回予告では「影とりプロジェクター」だけのアニメ化かと思ったが、前半は「架空通話アダプター」の映像化。「架空通話アダプター」に登場するアイドルを星野スミレに改変したり、落目ドジ郎を通話相手の選択肢に出したりして、見事にひとつながりのストーリーにまとめていた。
原作を不用意に逸脱する場面もなく、影だけで表現された星野スミレの日常もしっかりアニメーション芝居で表現しており、ひとつのエピソードとしては満足できた。ただ、この結末で星野スミレの正体を知ったのだとすると、放映順は「ドラえもんパーマン危機一髪!?」と入れかえれば、1時間SP全体としても連続性が感じられたんじゃないかな、とも思った。

*1:ドラえもんの「どっちも、自分が正しいと思ってるよ。戦争なんてそんなもんだよ。」という台詞が有名。