法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ZETMAN』雑多な感想

作画の平均値がわりと高い上、森久司が終盤に入っても何度か参加したりと最高値もかなり上だった。やや癖がある原作者の絵柄が、逆にアニメ化した時の幅を許した感がある。インターネット上の感想を広く見ても、おおむね森久司作画は動きが良いとして好評だった。
キャラクターデザインを手がけた高谷浩利はコンテにも連名で参加を続けた。アクション関係の殺陣が安定して良かったことに貢献したのではないかと想像するが、どのような形で絵コンテに関わったのか不明なので、これは何ともいえない。


物語については、残念な印象が残る。
正面から「ヒーロー」の正義を問おうとしつつも、状況を複雑にしたまま投げ出して、1クールかけたなりの結論にすらいたらなかった。
せめて、悪であれば親すら切り捨てる白い正義アルファスと、全てを救おうとする赤い怪物ゼットマンとで、わかたれた二つの道を示せば、まだしも物語が閉じたと感じられただろう。しかし意図せずとも死をもたらす怪物を生かそうとしたゼットマンが、三年後に怪物狩りを行っている姿には、どうしても納得がいかない。
たとえば、ゼットマンが怪物の正体を暴いて襲われそうな人間を救いつつも、怪物を殺しはしないという行動を選択しているならば、実現性の低い理想を愚直に信じて行動するヒーローとして成り立っただろう。結局どちらも同じ道を選んだという結末というなら、三年後にアルファスとゼットマンが対立を続けていることに主題上の意味が存在しない。


第1話のまとまりは良かったと今でも思うし*1米たにヨシトモが連名でコンテを手がけた第7話は敵味方の信念に筋が通っていて見やすかった。田中花子をめぐる真相も露骨な伏線をはりつつ衝撃をもたらしてくれた。
しかし、シリーズ構成の冨岡淳広が全話脚本を手がけたが、悪い意味で混沌とした状況の整理がうまくいっていなかった。尺に余裕がなく、キャラクターは多いのだから、もっと緻密に計算して無駄を削ぎ落とすべきだったろう。
思えば、前半の紆余曲折からして1クール作品としては長すぎた*2。結末までに、会長である祖父が贖罪し、社長である父が断罪されるなら、悪事は主として父に背負わせるべきだったし、祖父は物語の初期から心から贖罪しておくべきだった。

*1:感想はこちら。http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20120406/1333727820

*2:原作ではもっと前日談が長いらしいが、未読。