法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

星が見えない真っ暗な宇宙で

まずネタっぽく捏造説を語るが、端々でマジに思っていることが漏れ出る。そもそもが宇宙の映像について無知でないと書けないネタばかり。
中国の有人宇宙飛行はねつ造か?→国営新華社が発射前に打ち上げ成功を誇らしげに伝える、宇宙遊泳の映像に泡が見つかる - アルカン速報


端々に見られるマジさに危機感をいだき、松浦晋也氏が厳しくマジレス。「餃子」のような明らかなネタには寛容を見せていることも注意。
このっ、バカ共が!: 松浦晋也のL/D


いざマジレスされたらネタだと返し、嘘を見抜いているふりをする。そしてマジという態度の必死さへ矛先を向けていく……
http://warasoku.blog18.fc2.com/blog-entry-613.html*1
ところが、引用された書き込み群を見ていくと、マジレスの内容をきちんと読んでなくて、そもそも何がマジなのかもわかっておらず、徐々に捏造説へ戻っていく。捏造説を批判しない掲示板の生温い空気に身を任せて流されていくばかり。
批判されて“ネタにマジレス”と反応する場合の多くは、場の形勢を見た言い逃れでしかない。状況が感情的な発言を容認してくれると思えば“やっぱりマジ”と言い出すのだ。


宇宙空間で星空が映らないことなど、無数に放映されてきた宇宙映像で確認できるのはもちろん、フィクションの『プラネテス』でも効果的に描写されている*2。まったく映像捏造論者は何年代のSF宇宙に生きているのだろうか。
ちなみに原作マンガ版『プラネテス』は一部をネットで立ち読みできる*3。数年前に全4巻で完結したばかりなので単行本を手に入れることも難しくない。
アニメ版『プラネテス』もNHKアニメだったおかげで、全国地上波で深夜放映されたこともある。ゴールデンタイムにスペシャル番組が放映されたことも。アニメ『プラネテス』はサンライズ制作、谷口悟郎監督、大河内一楼シリーズ構成で、『コードギアス反逆のルルーシュ』とスタッフに共通項が多い。ネットでは高い評価とともに相応の知名度もあったとばかり思っていた。


さて、『プラネテス』とは、宇宙のゴミ「スペースデブリ」を回収する近未来の人々を描いた群像劇だ。
原作マンガ第4巻では大国間の戦争が描かれ、通常のデブリにまぎれて意図的にデブリをばらまく「軌道機雷」という兵器が登場する。建前では通常のデブリと同じ扱いで兵器ではなく、しかし上からのお達しで回収してはならないことになっている。ネタのふりをしたマジ、それともマジのふりをしたネタというべきか。
主人公の一人フィー・カーマイケルは、大人になれなかったため社会から弾き出されていった叔父を思い出し、軌道機雷の回収を始める。そんなフィーに、一人の同業者がさとす*4

相手は軍隊なんだぜ?
言ってみりゃあれだデブリ作りのプロだよ
俺達の正反対


奴らは仕事熱心だよ
オレ達が10年かかって拾うデブリを10分でバラマく


本気出されちゃ勝ち目はねーよ

そう、片づける意思のない相手に対して、片づける側は圧倒的に不利なのだ。そしてフィーは「勝てないケンカにムキになっていいのはガキのうちだけさ」*5という相手の言葉をかかえながら敗北する。
宇宙遊泳捏造ネタからマジに感化された例が明らかな今、小さな広がりの段階だからこそ、大事な行動がある。
フィーは敗北後、デブリ回収業を辞め、夜の地上でバイクを走らせながら独白する*6

私にどうしろと言うんだ
バカ共の尻ぬぐいなんかもうたくさんだ


こんな世界
私なんかの手には負えないよ

だが、そもそもフィーは、手に負えるからと尻ぬぐいを始めたわけではない。大人になると忘れてしまう「感覚」に従っただけだ。
だからフィーは最終的に帰還して、遠い記憶の中にいる叔父へ問いかける*7。「今もあなたは大人の心と一緒に子供の心も持ち続けていますか?」と。自分もまた、そうでありたいと確認するために。

*1:引用やタイトルを見る限り、まとめブログ側やスレッドを立てた人物は、ある程度わかっていると思う。

*2:宇宙空間か黒ベタ背景か区別つかないような場面では、必要に応じて星も描いている。

*3:http://comics.yahoo.co.jp/kodansha/yukimura01/puranete01/list/list_0001.html

*4:121頁。引用時、改行位置変更。

*5:122頁。

*6:216頁。引用時、改行位置変更。

*7:244頁。