法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

TVアニメ版『プラネテス』の受容は、前段の『キングゲイナー』が補助線として重要かもしれない

TVアニメに挑戦的な企画が増えた2000年前後、制作会社サンライズにおいて『ガサラキ』や『キングゲイナー』といった大ベテラン監督のオリジナル作品がつくられた。
どちらも多くの挑戦をおこなって良くも悪くも濃密すぎる作品となり、それゆえの難点も多かったのだが、そのスタッフワークを継承するように娯楽作品としてスマッシュヒットした作品がいくつも生まれた。
そうした関係が深いものとして、『ガサラキ』の場合は『コードギアス』がそれだろうし、『キングゲイナー』は『プラネテス』だろう、という印象がある。


それはそれとして、先日にツイートが話題になった野田篤司氏は『プラネテス』を監修したJAXA関係者というだけでなく、もともとSF業界とも関係が近いのに、星雲賞を受賞した作品をはじめて視聴したということ自体が意外だった。
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また女性主人公像が青臭く嫌悪感があるのは意図的だからともかく*1、正確に物理演算で描写することが難しい手描きアニメにおいては、かなり限界に近いリアリティで宇宙空間を描いていたと思っていたので*2、それでも本職には違和感が強すぎるというのも難しいものを感じた。

*1:別ツイートで想定されている宇宙開発に悪影響をもたらしかねない人物像としては、無謀な実験で犠牲者を出しながら会見でひらきなおったロックスミスというキャラクターのほうが重要だと思うのだが、野田氏が視聴するずっと後の登場になる。またTVアニメ版は原作が完結する前に企画が進行したためか、ロックスミスの存在感はずっと薄い。かわりにTVアニメ版は、南北問題が衝突する舞台として宇宙を位置づけて、米ソ開発競争時代を再演するように宇宙開発への疑問を語りなおしている。

*2:スペースデブリケスラーシンドロームの描写が現実と異なることはTVアニメ化の段階で知られていたが、それを改変することはいくらオリジナル描写の多い作品とはいえ、原作の根幹を崩すので無理だったのだろう。