先日も言及したように台湾が野球で不参加を決定したりと*1、さまざまな地域が辞退するなかで強行される東京五輪。
さまざまな報道を見ながら、藤子・F・不二雄『21エモン』で1968年に描かれた単発エピソードを思い出していた。
成功の記憶とともに語られる1964年の東京オリンピックから4年後、ボイコットをふせぐため南アフリカが不参加となったメキシコオリンピックと同年。年頭にはマラソン選手の円谷幸吉が、国家的な期待に苦悩して自殺している。
そのような時代に描かれた物語が「宇宙オリンピック」。異星人から超文明がもたらされて宇宙と交流している地球で、第1回宇宙オリンピックが開催された*2
しかし身体能力は個性さまざまな異星人が圧倒する。先述の設定が根幹にあるため、技術力で劣る地球人はロボット部門でもメダルをとれない*3。
しかし芋掘り用ロボットのゴンスケが芋掘り部門に出場すると冗談をいったところ、偶然が重なって主人公から信用されてしまう。
そうして信じられた冗談がスクープというかたちで報じられ、他のメディアも後追いして社会的に信用を集めていく*4。
それを知るよしもない委員会だが、忘れている可能性があると思いこみ、責任回避のため急いで会場を建設させる*5。
もちろん選手として参加する異星人など存在しない。逃げることもできずに出場させられたゴンスケが、ひとりメダルにかがやくのであった*6。
いかにも落語愛好家な漫画家らしい、皮肉めいた展開だ。
しかし技術力が宇宙からもたらされたという作品の根幹設定が背景にあり、ロボットが出場する種目があることも自然に説明する技巧がある。開催1回目という設定も、委員会が事態を把握できない説得力を生む。
そして金メダルをとったのはたった一種目だけ。はっきり被害を受ける異星人はいないし、そもそも地球側に愚かさはあっても悪意は誰ひとりもっていない。
しかし、もし地球側が異星人の不参加に気づいて、それでも芋掘り種目を強行したらどうだったか……そこで獲得したメダルは、もはや無価値ですらない。
ちなみにJOC理事の山口香氏へのインタビューによると、たとえ無理して海外の選手が出場しても、今年は例年以上に開催国が有利になりかねないという。
山口香JOC理事「今回の五輪は危険でアンフェア(不公平)なものになる」|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
今回は、練習パートナーを日本に連れてくることができない。ものすごいハンデです。それは柔道だけでなく、いろんな種目で起きていること。
でも日本人選手は通常の練習や準備をしてから、本番を迎えられる。「ホスト国のアドバンテージ」となるかもしれないが、そういうアンフェアなことがあちこちに出てくる。
圧倒的な不公平をしいた状況で獲得したメダルが、はたして栄誉といえるのか……それこそ現状での開催を求める選手の心情を知りたいところだ。