法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』限界突破SP

今回は限界突破SPということで、思わず「シャブやってんの?」*1と言いたくなる人物ばかり登場。
いつもの空港税関も、オーストラリアではなくカナダのため全体的に雰囲気がゆるく*2、友人をたよってきた男を職員が冗談で驚かしたりする。


イタリアでは自転車で危険なことばかりする男ヴィットリオ・ブルモッティが登場。
いつもは鉄橋の橋桁などを自転車でわたっているが、現在はマフィアに突撃取材を敢行。俳優を雇って麻薬を取引する約束をとりつけ、入念な下準備をして選んだ作戦が、防弾チョッキを着て自転車で正面から現場の建物に行くという……本当に「シャブやってんの?」と思わざるをえない光景だった。
さらにシチリア島で麻薬売買が大々的におこなわれている地区へ、自動車で突入取材。大声でマフィアに呼びかけて投石や銃撃を浴びるという正気とは思えない行動だった。すでにマフィアからも敵視されているというが、あまりに非現実的な光景なので、プロレスのようにも見えた。


他にイタリアで、13歳の少女が惨殺された事件をDNA捜査した顛末を紹介。
被害者の衣類から男性のDNAを採取し、それもただ容疑者と一致するかだけを調べるのではなく、青い瞳である可能性があることまで判断。さらにY染色体にしぼって近い人物をさがし、さらにその親族のDNAを調べていくという手法で、少しずつ捜査の輪を縮めていく。
ほとんどディストピアと思わせる捜査手法で、DNA登録制の是非をめぐってスタジオでも議論された。捜査過程で不倫の隠し子が容疑者と判明していったことも象徴的だった。

*1:金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(6) (講談社コミックス)の1エピソードより。

*2:米国の夫婦が拳銃をもっていた理由が、公園に行く時の自営のためという説明で、カナダ側の職員が驚く一幕もあった。

『スター☆トゥインクルプリキュア』第37話 UMAで優勝!ハロウィン仮装コンテスト☆

商店街のハロウィン仮装コンテストに出場するため、クラスでチームを作る。星奈らしく未確認生命体をモチーフにした仮装をすることになったが……


東映のTVアニメには珍しく作画監督が4人もクレジット。絵柄のブレが今作で最もはげしいが、大量のコスプレにあわせたデザインをTVアニメのスケジュールで完成させるために必要だったのだろうか。
基本的にはコメディ回ではあるが、住民のコスプレで情景が一変した街の面白味から、意図せずカッパードがまぎれこみ、そのシリアスな過去をにおわせる転調は印象的だった。
コスプレのマニアックな元ネタも楽しい。子供向けメディアの最新動向はよく知らないが、まだこうしたオカルトネタが人気だったりするのだろうか?

『ドラえもん』ドラえもんがいっぱい/アルマジロン

今回は前後ともアニメオリジナルストーリーで、ドラえもんがひどい目にあうパターン。


ドラえもんがいっぱい」は、映った人間を写真からひっぱりだす秘密道具が登場。そこでのび太は草むしりをさせるため、アルバムからドラえもんをひっぱりだすが、ついでならと大量に出してしまい……
鈴木洋介脚本に佐野隆史コンテ。ほとんど既存キャラクターしか登場しないためか、嶋津郁雄が珍しく作画監督とキャラ設定の両方を担当。
物語は、おそらくタイムマシンで無理やり集める原作短編「ドラえもんだらけ」から着想したエピソード。しかし秘密道具の機能がまったく違っていて、ちゃんとそれを活用した独自性ある内容になっていた。
「写真きゅうばん棒」は遠くから被写体本人をつれてくる道具ではなく、写真に残された情報から人間のコピーを作る道具といったところ。ひっぱりだすための吸盤で肉体を維持しているので区別しやすいし、解除するための秘密道具が壊れたことから商品が入荷されるまでがタイムリミットになる。新発売された人気商品という説明が入荷に時間がかかる伏線になっているのが芸が細かい。
そこからドラえもんがせまい部屋に満ちあふれるビジュアルがまず楽しく、そのドラえもんのび太のためにさまざまな意見をぶつけあうドラマも楽しい。寝不足でドラえもんが狂気におちいっていく「ドラえもんだらけ」と違って、たぶん写真を撮られた時の性格が反映されている描写で、優しさも厳しさも既存のドラえもんキャラクターにとどまっていて、どの主張にも説得力がある。
そして最後の最後にのび太の命の危機を救うため、大量ドラえもんが初めて協力する感動展開になるかと思わせて、商品がとどいて解除が始まる。生気が抜けて人格が消えていくドラえもんの姿が恐ろしくも切なくて、ちゃんと秘密道具の倫理的な問題をうかがわせる描写になっている。


アルマジロン」は、さまざまな理由で傷だらけになるのび太のため、防御力を高める秘密道具が登場。丸くなろうと頭を下げると一瞬で丈夫なボール状になる。のび太は安心して出かけ、ボール形態で遊んだりするが……
伊藤公志脚本にパクキョンスンコンテ。最初はボールのはずみかたに違和感があったが、かなり自由に思ったとおりに動けていくので、その疑問は解消された。服装を反映したカラフルなボールの作画がていねいで、違う形状で移動する街の美術も緻密で生活感があり、物語に求められる映像を作れていたのが良い。
物語そのものも、違う原因で同日に肉体が傷つくのび太や、室内でボーリングをしないようにとドラえもんに怒る野比*1など、原作の描写を細かくひろっているのが楽しい。けっこうな御都合主義を、原作の引用という文脈で許容させる手法でもある。
そこからスネ夫しずちゃんを巻きこんで楽しんだり、ジャイアンをからかったりというパターンが始まるが、ずっとアルマジロへの変身を拒否していたドラえもんの真実が明かされる場面から状況が一転。ドラえもんの場合は顔が露出した形状になる上、なぜかなかなか元にもどれない。そうなる理由はまったく説明されないが、ドラえもんだけがロボットで人間とは体型も異なるし、物語の最初からずっと秘密道具を使いたがらない伏線がはられていたので、そういうものとして理解できた。そこから周囲よりひどい目にあっていくドラえもんが可愛くもかわいそう。
一方、普通のボールと思われてジャイアンとムクのオモチャにされたのび太は、肉体的には傷つけられなくてもオナラをされたり犬の舌でなめられたりさんざんな目に。それでオチかと思いきや、のび太が何をされていたのかドラえもんが推理して、なぜわかったのかのび太が驚く。なるほどボールと思ったままなら、ジャイアンは所有権を主張するため名前を書いたりするかもしれない。

*1:『ドラえもん』うそつきかがみ/十円なんでもストア - 法華狼の日記 なお、今回の脚本家もツイートで言及し、秘密道具自体も「トカゲロン」の姉妹商品という裏設定を説明している。

表現の不自由展と宇崎ちゃんのポスターの相違点について

献血募集ポスターに『宇崎ちゃんは遊びたい!』の3巻表紙絵が流用されて、さまざまな議論があったらしい。

宇崎ちゃんは遊びたい! 3 (ドラゴンコミックスエイジ)

宇崎ちゃんは遊びたい! 3 (ドラゴンコミックスエイジ)

流行にうといもので、漫画のタイトルすら聞きおぼえがなく、私個人はどの立場からも確信をもって主張しがたい。


ただ、下記の匿名記事には首をかしげるところがあったので、いくつか記録をかねて書いておく。
表現の不自由展と宇崎ちゃんのポスターの共通点について
まず論争の発端からして事実誤認をしていないかという疑問がある。

例によっていつもの太田啓子弁護士の適当に難癖を付けて周囲のフェミニストを焚き付けて、いい感じに燃え始めたら自分はつぶやきを消して「え、私、そんなこと言いましたっけ」となかったことにしようとする火付けしぐさなんだから「はいはい、いつものね」と黙ってスルーしておけばいいのに、こぞってブクマをつけまくってやがる。

実際の太田氏のツイートを参照すれば、外国人による批判的なツイートでポスターの存在を知って、同調するように批判をしていることがわかる。

能動的に太田氏がポスターが見つけたわけもないし、たとえその批判が不当だとしても*1、それはすでに付けられている難癖に同調したという問題だ。


そして本題の、表現の不自由展と宇崎ちゃんのポスター*2の共通点だが、この匿名記事は相違点の指摘を奇妙な論理で反駁している。

grdgs あいトレの場合は「表現自体を許さない」だったのに対し、こちらは「TPOを考えろ」だからまったく違うわな。

はい、馬鹿丸出し。確かに「表現自体を許さない」とのたまったネトウヨもいただろう。立川流を名乗るワイドショーのコメンテーターもいただろう。

だがそんな過激な言い分はまともに取り合っている奴らはほとんどいまい。

さまざまな有力政治家が不自由展を非難して抑圧の姿勢を見せたことや、暴力的な脅迫が示唆されて実際に展示が一時中止されたことすら忘れているのだろうか。首をかしげながら匿名記事を読んでいくと、「文科省補助金不交付にしろ、河村市長の座り込みにしろ、いずれも大衆からの批判がなければまかり通るものではあるまい」などと大衆が同調していることを認めているが。
いずれにせよ、匿名記事が大雑把に「規制しようとする」と主張しているのに対して、id:grdgs氏は「許さない」と「考えろ」と表現を変えているのは示唆的だ。考えるようにうながすことは、それ自体がひとつの自由であるべき言論だ。
今のところ太田氏らの脅迫にさらされているわけではない以上、日赤側は批判に対して反論することも、批判を受けいれつつ表現をとりさげないことも、あえていえば批判を黙殺することもできる。


匿名記事が表現規制についてよく考えずに主張していることは、id:tikani_nemuru_M氏への反駁で、より明確になっている。

例によって上から目線でドヤ顔を披露しているがここでidコールされているmemorystockが問題視しているのは、

memorystock この絵やキャラを守りたいのではなく、規制理由をきちんと言語化出来る人がおらず「NGじゃん」「本当に嫌」が規制派トップなのはアレすぎではと危惧するものです。挙句「戦士」↓のような無意味な侮辱に逃げるし。

とあるように、あのポスターの批判派がポスターを撤去するだけの理由をまともに言語化していないことである。

「公権力による規制と大衆からの批判」の相違を無視して「規制」と書いて揚げ足をとられたのであれば、言語化能力が欠けていたのはmemorystock氏の側だろう。
ついでにいえば、きちんと理由を言語化できない「NGじゃん」「本当に嫌」は、感想の範囲にとどまるのであれば、それもまたひとつの表現の自由だろう。
感覚的な反応それ自体が悪いわけでは必ずしもない。問題なのは、規制したい真意を糊塗するように「こうした表現に税金を使うのはおかしい」といった後づけの主張をする態度だ*3


もちろん不自由展とポスターは、匿名記事も書いているように「まったく同じ」わけでも「まったく違う」わけでもない。
ただ少なくとも表現の自由という基準で見れば大きな開きがあるといわざるをえない。不自由展は制限された閉鎖空間でおこなわれ、文脈を解してもらうために様々な手段を講じた。ポスターは第三者に広く公開されるものであり、一枚絵全体で文脈を読みとってもらわなければならない。
匿名記事は「大衆からの批判」という共通点をもって、不自由展とポスターが同じように規制の危機にあるかのように主張している。不自由展の展示物は、多くが公権力によって規制された作品という順序すら誤認しているのだ。

そうした大衆からの批判が公権力による規制に繋がる危険性が炙りだされたのが表現の不自由展ではなかっただろうか。

文科省補助金不交付にしろ、河村市長の座り込みにしろ、いずれも大衆からの批判がなければまかり通るものではあるまい。

そもそも、匿名記事の主張が正しいならば、大衆からの批判がされた表現は全て規制の危機にあるというのだろうか。たとえば『けものフレンズ2』の制作者に対して批判とは呼べない攻撃が一部であったが*4、ならば『けものフレンズ2』への批判は表現の自由をさまたげているといえるだろうか*5
まさかそのようなわけはあるまい。不自由展への弾圧を批判する側にしても、必ずしも展示物を全肯定はしていないし、時には明確に批判的な評価をくだしているくらいだ。


表現の自由と不当な批判という、重なりつつも同一ではない行為を混同している問題が、おそらくこの匿名記事の根底にある。
もちろん、議論で勝てない誤った批判であるからこそ、権力による抑圧や暴力による弾圧につながることはよくあるだろう。
しかし、たとえ批判内容はそれなりに妥当であっても、脅迫的な言辞を用いれば、それは表現の自由を驚かしていることになる。
逆に、事実誤認にもとづく明らかに誤った批判であっても、それを発表することが表現の自由をさまたげるとは限らない。
表現の自由とは、批判されない特権のことではない。

*1:少なくとも画像のトリミングなどはおこなわず、きちんと公式サイトのキャンペーンページも提示して、問題提起できるかたちにはしている。「絶対負けんなよ!」「原発ふざけんな!」「放射能に負けないよ!」といった叫びも同時に収録した映像作品から「放射能最高!」という叫びだけ切りとって批判されたような事例とはそれだけでも異なる。「反日」「福島ヘイト」と批判。アーティストが作品に込めた本当の思いとは

*2:以下、それぞれ「不自由展」「ポスター」と略記する。

*3:一応、匿名記事がそうだと断言するわけではないが。

*4:

*5:不自由展への攻撃とで、象徴的な情景も報道された。『クローズアップ現代+』「表現の不自由展・その後」 中止の波紋 - 法華狼の日記

北方領土エリカ、クマと仲良くなったとアピールする

北方領土エリカちゃんとは、エトピリカという鳥をモチーフにした、北方領土返還運動の広報キャラクターだった。
北方領土イメージキャラクター「エリカちゃん」 | 独立行政法人 北方領土問題対策協会
北方領土エリカちゃんTwitter 北方対策本部 - 内閣府
官製広報キャラクターでも珍しい主張の強さで一時期から注目を集め、日露首脳会談で北方領土問題が後退したことに合わせた沈黙でさらに注目を集めた。
官製ゆるキャラ・エリカちゃん、「沈黙の1日」の悲哀:朝日新聞デジタル

「今から皆さんに、北方領土に関するクイズを出すピィ~♪ まずは初級編だピ! 【第1問】北方領土を不法に占拠しているのはどの国でしょう?」

 ゆるキャラらしからぬ挑戦的な出題に「全然ゆるくないぴー」「ロックだ」などの反応が殺到した。

 エリカちゃんは少しも騒がず「正解は、【ロシア】だピッ!」とツイートしてから、第2問を出題した。

プチ鹿島 2019年・北方領土の日と北方領土エリカちゃんを語る

「硬軟織り交ぜた話題で、世代を超えて皆さんに北方領土問題に興味を持ってもらえるとうれしいピィ♪」って。1年前に言っているわけです。ねえ。そりゃそうでしょう。「北方領土は日本の固有の領土です!」っていう。で、今年、北方領土の日。気になるじゃないですか。ねえ。エリカちゃん。あれだけ強気なエリカちゃんですから、なにか言ってくれるだろう、ツイートしてくれるだろうと思ったら、ゼロ。

そんなツイッターアカウントも最近は再び精力的に発信するようになっているが、ひとつ興味深いツイートがあった。

いうまでもなく、クマといえばロシアを象徴する動物である。
子どもの絵本やおもちゃには熊がモチーフとなったものが多いが、なぜ獰猛な熊が好まれるのか知りたい。 | レファレンス協同データベース

『イメージ・シンボル事典』(アト・ド・フリース著 大修館書店 1984
 p49-50 「BEAR クマ」の項に「象徴として 1 高貴を表し、王はオットセイ、クマ、メルシナ(妖精)の血統である。ロシアでは人間の友であり、この国のエンブレムとなっている。」

文脈を読ませるかたちでしか発信できなかったのかもしれないし、意図せず文脈が生まれてしまったのかもしれない。
その文脈を読んでもらわないと困るのかもしれないし、そうした深読みをされると困るのかもしれない。
いずれにせよキャラクターを用いた広報というものの難しさを感じるツイートだった。