~けものはいても のけものはいない なぜならもう ころされたから~
「あいちトリエンナーレ2019」で開催3日で中止され、その回復がなされないままの1ヶ月をまとめる。
「表現の不自由展・その後」 中止の波紋 - NHK クローズアップ現代+
取材を通して見えてきたのは、猛烈な抗議や脅迫の実態です。また、さまざまな催しが中止となる事態は、トリエンナーレの前から各地で起きていた事もわかってきました。
NHKらしくSNS投稿者にも接触。16歳の高校生は数千人のフォロワーがいて、呼びかけしたツイートのひとつも数千リツイートされたという。
その少年の着ている黒いTシャツが、よく見ると『けものフレンズ』をあしらったものだった*1。
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主題歌の「けものはいても のけものはいない」という歌詞がインターネットで流行した作品だった。
1期を少数精鋭で映像化して絶賛されたアニメスタッフが、上層部の意向によって2期で降板し、その報告に多くのファンが落胆したことも鮮明におぼえている*2。
もちろん、作品のメッセージをどのように受けとるかまでは視聴者の自由ではあるが、少年の服装に気づいた時から、いきぐるしさを感じてならない。
それで番組全体についてだが、30分で1ヶ月を簡潔にまとめ、今後の展望を語らせるという構成は、おおむね普通によくできていた。
「反日」とされがちな表現が国内外で公権力によって攻撃されているという視点は不足していたが、それくらいはより充実した続報を期待することもできた。
どうしても首をかしげたのが、展示に対する各政治家の反応を紹介するくだり。
真っ先に反応した名古屋市長の河村たかし氏や、金を出しても口を出さないという姿勢を示した愛知県知事の大村秀章氏を対比させたまではわかる。河村氏に同調した大阪市長の松井一郎氏も、政党の代表として重視されるのは当然だろう。
また、神奈川県知事の黒岩祐治氏が紹介されないのも理解はできる。いったん表現の自由を逸脱したと主張したのは問題だが*3、誤解を与えたとして数日後に撤回したので*4、短い時間しかない今回は紹介する優先順位が下がったのは想像できる。
しかし官房長官の菅義偉氏を最後まで紹介しなかったのは、さすがに目を疑った。展示中に補助金交付の見直しをにおわす発言をして*5、批判されてもいまだ撤回はしていない。開催させないことを仮定として語った黒岩氏と違って、実際に補助金を出している側の発言だったのに、なぜ今回の番組スタッフはとりあげなかったのか。
あえて番組を高評価するならば、現代日本の「表現の不自由」の根幹がどこにあるのか、まるで「空気」のように映しだしていたといえるだろうか。
*1:私の知識ではTシャツの特定はできなかった。