潜水士の仙崎は恋人の伊沢との結婚をひかえていたが、海面不時着事故の救出失敗という痛みをかかえていた。そして鹿児島沖で発生した巨大カーフェリー座礁事故において、伊沢が搭乗客のひとりであることを知る。仙崎は潜水士として伊沢ひとりではなく、事故にあった人々すべてを救おうと奮闘するが……
佐藤秀峰の海難救助漫画を実写化した2006年の日本映画。映画1作目*1から連続ドラマ化をへて、最終作の予定で公開された映画2作目。
同年公開の日本映画で2位となる70憶円以上の興収をあげた。1位の『ゲド戦記』*2にはわずかにおよばなかったが、実写に限定すると1位。かつては漫画の実写化の代表的な成功例だった。
過去興行収入上位作品 一般社団法人日本映画製作者連盟
しかし、後に新たなシリーズ最終作として3作目*3、さらに4作目まで映画がつくられ、シリーズ自体の人気はたもたれていたが、越権行為で原作者を激怒させて映像ソフトの販売や放送や配信が禁じられた。ヒット作として映像ソフトはDVDもBlu-rayも大量に中古流通しており、現在でも視聴は難しくないが。
ディザスター映画として、事故と救出の描写比率の高さはすばらしい。冒頭でいきなり悪天候における海面不時着飛行機からの救出劇が描かれ、本筋の巨大カーフェリー事故も映画が開始して15分以内にはじまる。
沈没船に少人数でとりのこされて脱出しようと奮闘する後半は3作目以上に『ポセイドン・アドベンチャー』*4を連想させる。しかしそれ以前に少しずつ沈没しはじめた状況で多人数を脱出させようとする前半との変化があり、この作品なりのオリジナリティが構成にある。内部に車両が満載されたカーフェリーであるため、そこを脱出の近道として利用しようとする情景や、漏れ出した燃料*5による爆発的な火災などもまた新しい味わいがある。
しかし災害の間隙を埋めるドラマがひどく、短い描写なのに退屈すぎて映画からサスペンスもスケール感もうしなわれている。生理的な欲求を暴走させるキャラクターで生々しさを表現しようとする原作者と、性欲の開陳を軽くて楽しい冗談のようにあつかう当時のフジテレビらしい作風が、最悪のマリアージュをつくりだしている。
また、事態を急変させる爆発などで画面をゆらす時はカット割りの細かいクローズアップばかりで、迫力を感じさせるよりも単純に見づらくなっている問題もあった。状況のひどさを全体がわかりやすい映像でも見せてほしい。それなり以上にしっかりした撮影セットをつくっているのだから小手先のごまかしは必要ないはずだ。
その意味で、冒頭の海面不時着を全体像のVFXとクローズアップ用のセットだけで表現しているところはうまかった。巨大な飛行機セットを水面に浮かべる情景を省略して省力し、全体像を見せてから人間にカメラをよせる定石的な演出に見せている。視聴している時は小さなセットしかないことに気づかなかった。
他にもかたむいた船とヘリコプターがからむカットや、複数のダイバーが救出に向かうロングショットなど、短さでごまかしつつクオリティの高いフルCGショットがけっこうあって、地味に特撮映画としての見どころになっている。
*3:『THE LAST MESSAGE 海猿』 - 法華狼の日記
*5:オーディオコメンタリーによると、原作ではタンクローリーだったが、危険物あつかいで実際には乗らないことがわかり、バイクが倒れて燃料がもれる描写に改変したという。