法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ジョジョの奇妙な冒険』Adventure.3-銀の戦車&力

DIOのいるエジプトに向かった一行だが、飛行機が墜落して海面に不時着。通りがかった輸送船に逃げこむも、そこには人の気配がなかった……


まず後半から結末までOVA化された『ジョジョの奇妙な冒険』第3部を、あらためて前半をOVA化。

1993年にOVA化されたのは6巻分で各話40分。比べて2000年にOVA化されたのは7巻分で各話30分。1993年版でもいくつかの描写を削らざるをえなかったのに、戦う相手の数も多い2000年版は大きく構成を変える必要があった。
まずサブタイトルにも登場しないタワーオブグレーは、飛行機を墜落させただけで、本体も前話*1の結末にそれらしき人影が映るだけ。原作を知らなければスタンドの仕業ということすらわからない。さらにチャーター船で攻撃してきたダークブルームーンは完全に削除。
難破からではなく墜落から輸送船上で戦う展開となり、船上戦がつづくという原作のロードムービーらしさを排したかわりに、スピーディーでテンポが良くなっている。


そして、原作では香港で登場したポルナレフが、OVAでは輸送船上にひとりいる謎めいた男として登場。最初から敵ということが明確なので、そのまま戦いに移行して、サスペンスを弱めない。ストレングスの存在を隠すミスディレクションとしても効果をあげている。
ポルナレフを倒した後、輸送船そのものが敵スタンドのストレングスとわかっていく。ここはほとんど原作と同じ描写を、ていねいなメカ作画で充実したアクションシーンとして楽しませる。
そして承太郎たちが追いつめられたところで、起き上がったポルナレフが一刀両断という新展開。ポルナレフが仲間になったことを、原作よりたよれる存在として鮮烈に印象づける。


さらに、原作通りにポルナレフの復讐心が語られた結末で、第1巻*2から登場していたDIOの側近の美女が、その関係者だという驚愕の設定が明かされる。
いや、原作にも同じ立場の側近は登場していたのだが、恐ろしさや醜さとともに愛嬌も感じさせる小柄な老婆だったのだ。年齢的に主人公たちと対等な外見を与えて、さらに序盤からくりかえし登場場面を足すことで、2000年版で倒すべき中ボスとしての風格が生まれた。
なるほど、すでにラスボスのDIOを倒すエピソードまで作られた以上、前半までのOVA化にはそれなりに倒すべき存在感の敵を新たに作らなければならない。それを原作からアレンジして印象づけ、うまく関係性を当てはめた。
1993年版と比べて2000年版の評価は低いのだが、こうした最小限のアレンジを重ねて全体の構造を媒体にあわせた作品は嫌いではない。厳しい制限のなかで工夫して、それがけっこううまくいっていること自体に好感が持てるのだ。