法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼』

 現代の日本には、人々をおそう怪物「魔化魍」と、それを退治するため「鬼」に変身する人間たちとそれを支える組織「猛士」があった。しかし海辺にあらわれた巨大な魔化魍の対峙に失敗し、響鬼が深手を負う。響鬼をしたう少年、明日夢は古文書をひもとき、戦国時代に活躍していた鬼たちの歴史を知っていく……


 2005年の日本映画。プロデューサーの白倉伸一郎や脚本の井上敏樹など、TV版をたちあげたスタッフとは異なるスタッフがメインに入り、意欲的すぎて制作続行が困難になったTV版の後半も担当することになった。

 たしかGYAO!でライダー映画シリーズを無料配信していた時に視聴したが、ピンとこなかった。あらためてDC版を映像ソフトで視聴したが、やはりピンとこなかった。


 やりたかったのは『七人の侍』なのだろう。そのオマージュでどうしてもやりがちな、七人も仲間がいるなら裏切り者を入れたいという欲望を我慢できなかったパターン。
 良くも悪くも当時は珍しく仮面ライダー同士が争わなかったTV版と差別化するように仲間同士で人間を守るか守らないかで戦ったりもするが、それが人間に邪魔者あつかいされて襲撃された現場でおこなうのが不自然すぎる。明日夢が昔の資料を読んで想像した光景ではあるが、いくらなんでもいったんその場所をはなれてから対立するべきだろう。
 そうして主人公まわり以外の一般人は鬼に敵対したのに、結末で葛藤もなく鬼に感謝している情景で終わるのも不自然。群集の身勝手さを描きたかったのだとしても、敵対も感謝もひとまとまりに動きすぎて不自然だし、それこそ『七人の侍』が感じさせた守るべき対象への違和感や敗北感などの複雑さがまったくない。そのため「猛士」のネーミングにつながるネタも感動できない。


 映像面も良くない。TV版もこだわりが空回りしたところはあったが、予算と手間をかけただけの映像にはなっていた。劇場版は思いつきのように色々な要素を登場させては予算不足を感じさせる。いくら使いまわしにくいとはいえスーツがTV版と比べて安っぽいのはダメだろう。鬼ヶ島のような新たな敵本拠地も出しているが攻略対象ではなく、放置されたまま終わる。映像リソースをさいてまで登場させなくても良かった。
 全体的に画面が暗いのも問題。たとえば冒頭の海水浴場はオーディオコメンタリーによると小雨のなかで撮影したらしい。天候の回復を待てない撮影状況なら、たとえば魔化魍の登場にあわせて天候が悪くなり、海水浴をやめようとした人々が襲われる……みたいな展開にアレンジできなかったのか。
 時代劇らしく村のオープンセットはきちんと新設して、群集の襲撃でひとつ燃やすような描写は良かったのだから、無理に思いつきのような描写をならべずにていねいに時代劇らしくつくってほしかった。TV版の主人公が昔の記録を読んで想像するようなメタ描写にするより、一種のパラレルワールドのように見せるくらいでも良かった。