法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ポセイドン・アドベンチャー』

からくも大嵐を脱した豪華客船ポセイドン号。老朽化しているが、同乗している船主の指示で遅れをとりもどすための全速航行をはじめる。
そして無事に新年をむかえてパーティーが始まった時、海底地震による津波でポセイドン号が転覆する……


ロナルド・ニーム監督による1972年のハリウッド映画。まとまった時間がとれたので初視聴したら、偶然にも年越しの物語だった。
ポセイドン・アドベンチャー (字幕版) - YouTube
DVD特典のメイキングによると、低予算作品が流行だった当時のハリウッドにおいて、ひさびさの大作映画として公開されたという。たしかに広々としたパーティー会場をはじめとした豪華客船の室内セットと、出口を求めて延々とつづく冒険活劇は力が入っている。それでいて船尾からの脱出を可能と信じる主人公チームが少人数のため、キャラクターに無駄がなく、大味とは感じさせない。
転覆した設定ゆえに上下逆でつくられた船内セットの情景的な楽しさと、水浸しの狭い通路を通りぬけていく俳優の奮闘だけで、現代でも新鮮な脱出劇として見ていられる。それなりに知恵をつかって道具をかきあつめていくトンチの楽しさもあったし、違う脱出口を目指す幽鬼のような別チームとの邂逅には神秘性すら感じた。
肥満体の女性が活躍するための伏線などはほしかったが、それでも危機を隠された設定であっさり乗りこえるのではなく、いったん別の方法を試して緊急避難的に活躍させているから、納得感はあった。


ただ致命的に残念なのは、ミニチュア特撮のスケール感。豪華客船に対する波が大嵐や津波にしても大きすぎて、オモチャにしか見えない。上下逆になった時の水泡も大きすぎる。
スケール感において円谷特撮は神格化されすぎていると思っているが、ずっと特撮をつくりつづけただけあって小さなミニチュアでも波でスケール感を出す手法は洗練されていた。
ひさびさの大作映画ということで、技法がきちんと継承されていない状態でミニチュア特撮を使って失敗したのだろうか。