「カンガルーハウス」は、オーストラリアでカンガルーの孤児をボランティアで育て、野生にかえす活動をしている夫婦を紹介。
オーストラリアでは交通事故などでカンガルーが死亡し、袋のなかにいる子供だけ助かることがよくあるという。そのようなカンガルーの子供をひきとる夫婦は、家のなかで多数飼育している。
カンガルーの袋のような形に布をつりさげ、その布のなかに子供を入れる。子供が拒否しないよう自身の臭いをかがせておぼえさせてミルクをやる。庭には餌になる木を植えているが、飼育費用は寄付金や近所の助けでまかなわれている。
どうしても安易な保護活動の問題を連想してしまうが、数十年活動しているとなると下手な学者も教えをこうくらいの知見がありそうではある。その意味では行政が資金などを補助するべきではないかと思った。
「世界のはしっこ、小さな教室」は、僻地に住む子供たちのため教師自身が移動する各国の事例を紹介。2023年の長編ドキュメンタリ映画のダイジェストだ。
シベリアのエヴェンキ族では、遊牧民の子供たちは座学に興味はないが、教師が教える動物の捕獲方法は熱心に学ぶ。アフリカのブルキナファソでは、教室に壁もろくにないのはいいとして、子供たちは5つの言語をつかって教師のつかう公用語フランス語を話せる児童はひとりだけ。このふたつは授業は大変そうだが、それでも教え学ぶ喜びが映像からつたわってきた。
そしてバングラデシュのスナムガンジでは、モンスーンにより一年の半分が水没する地域で、船に子供たちを乗せて授業をする。しかし児童のひとりは金銭のため児童婚が予定されていて、中学への進学をあきらめようとしていた。自身も児童婚されそうになったところを説得して進学し、今では家計をささえるようになった女性教師が児童の母親を説得する……
しかしひとつひとつは非常に興味深いのに、元が長尺で各国の事例を前後して見せられるためダイジェスト感がひどすぎる。今回はバングラデシュの船上教室パートだけ抽出してほしかった。
「ルーマニア地下 マンホールタウン」はルーマニアの共産党独裁の崩壊後にマンホールで暮らしているホームレスを取材。けっこう有名な社会問題だが、このドキュメンタリは12歳の少年の数年間を追う。
BS世界のドキュメンタリーでは「マンホールの少年 6年の記録」というタイトルで放送。原題は”BRUCE LEE AND THE OUTLAW”なので、全長版はおそらくブルース・リーのパートも長いのだろう。
「マンホールの少年 6年の記録」 - BS世界のドキュメンタリー - NHK
ルーマニアの都市地下には共産党政権下でつくられた温水パイプがとおっており、そこでブルース・リーと名乗る若者が子供たち数十人の世話をしながら犯罪の手先にも時々している。
12歳の少年はブルース・リーを父のように慕い、シンナーに似たオーロラックを吸い、同世代の少女と友人になり、地下生活を楽しんでいた。しかし4年後にカメラマンが少年に再会すると、16歳とは信じられないほど外見が幼く変わっていない。
病院で診察をうける少年は肋骨が浮かぶほどやせおとろえていて、半年間の入院を余儀なくされた。福祉の女性に助けられて普通の子供らしい生活をやりなおそうとするが、友人だった少女の死を知って再び地下生活に戻ろうとする。
それでもカメラマンが少年を助け、ブルース・リーは逮捕され、少年はふたたび歩み出すことができた……という結末。