「奇妙な証拠」は、カメラに映った不思議な現象をさまざまな専門家が推理する。答えが確定しない事例も時々ある。
小さな二足歩行の人影が深夜に空中に光線をはなつ監視カメラの映像で、最初は2羽のフクロウ、次に逆立ちした2匹のスカンクと推理された事例が印象的だった。光線に見えたのはスカンクが飛ばした臭い体液だったわけだが、そもそも何の知識もなければスカンクという動物って珍妙きわまりないな……と今さらながら思った。
「空港に捨てられていた赤ちゃん」は、1986年に英国ロンドンのガトウィック空港に捨てられていたスティーブンの親探し。
生後すぐの男児が空港のひとけのない場所に捨てられていて、外国人が捨てたとも考えられたが、DNA検査などで英国人らしいと判明。同じように捨てられて家族を発見した前例にならって新聞で大々的にとりあげてもらったが、親が名乗り出ることはなかった。
そして大人になって恋人と子供もできた青年は、見かける人が親かもしれないと思うようになり、孤独ではないと感じられるようになった……というところでドキュメンタリは終了。
結局は親が見つからなかった中途半端なダイジェストにスタジオで不満がもれたが、後日談として技術の進んだDNA検査でしぼりこみ、父親と兄弟に会えたということを紹介した。母親は亡くなっていて、父親は妻がスティーブンを妊娠していたことを知らず、なぜ捨てられていたかという理由は永遠の謎となったが、複雑な事情があったのだろうことはうかがえた。
「イギリス空港税関」は、恒例コーナーのイギリス版。
ふたつある似た荷物の一方から麻薬が検出されて、怪しまれた時に安全なひとつだけ持って出るパターンと推測されたが、持ち主の家族をしらべても麻薬の運び屋らしくない。そこで息子を別室で問いつめたところ、自国で一回だけ麻薬に手を出してしまったと告白された。両親には知られないよう入国させてあげたわけだが、スタジオでツッコミが入ったように顔出しで世界的に放映配信されているんだが……
「119歳のマラソンランナー」は、いくつかの謎解き映像を流した後に、取材当時に119歳と称するインドの老人がマラソンで好成績を出している謎を解こうとする。
西洋医学側が興味津々な一方、東洋医学のアーユルヴェーダの権威が全否定する対比がおもしろい。もちろん西洋が全肯定しているわけでもなく、ニューヨークタイムズが懐疑的な報道をしたこともつたえているわけだが。
ドキュメンタリ内ではインドのパスポートが友人の証言だけでつくれた時代があって記載された生年月日が証拠にならないことを指摘。さらにスタジオで後日談として自称126歳となった現在も毎日10kmを走っている一方、学校の記録によると100歳も超えていないらしいと指摘した。
ただドキュメンタリやスタジオが指摘するように、もし70代だとしても充分に見事な疾走ではあり、事実としてインドのマスターズで2位に入ったという。きちんとした出生記録があれば公的に活躍できるかもしれないが、怪しげな自称で世界的に知られることとどちらが本人にとって幸福なのかはわからないか。
「デンマークの元料理人が北朝鮮の闇取引に潜入」は、デンマークの民間人ウルリク・ラーセンが興味本位で朝鮮民主主義人民共和国へ潜入した顛末を紹介。
2021年の『ザ・モール』というドキュメンタリのダイジェストらしい。監督のマッツ・ブリュガーは2009年にも『ザ・レッド・チャペル』という北朝鮮潜入ドキュメンタリを撮っている。
ラーセンは北朝鮮の武器密輸商人に接触して、実査に契約にまでもちこんでしまう。ほとんど迷惑系Youtuberのようなノリだが十年間もかけて命がけ。
デンマーク内に朝鮮と友好的な団体があるとか、富豪と称して接触すれば撮影しても疑われないとか、本筋のスパイと関係ない細部も関係ある細部も興味深いものが多かった。
秘密裏に外国と取引するためスラム街の地下に豪華な部屋があって会談につかったりもするが、相手が相手ならスラム街の存在を見せても気にしないんだな、と思ったりも。
「麻薬セラピストの依頼殺人」は、2014年に米国ワイオミング州で麻薬依存を治療している人物から通報された事件を紹介。
周囲から信頼されて家庭も順風満帆な麻薬セラピストの女性が、麻薬利用者なら犯罪者の知りあいも多いだろうと主張して、殺し屋をほしがっているという。警察側は麻薬依存者の妄想だろうと考えた。
しかし念のため捜査してみると、セラピストの暴言により富豪の夫は別居しており、離婚しそうだという。セラピストが乱暴な口調で夫を殺してほしいと依頼する言葉も録音された。
おとり捜査と疑われる前にセラピストがおとりではないかと疑ったり、監視に気づかれそうになったら殺害方法の選択を質問したり、子供にショックをあたえないよう夫が殺されたことにして自発的に警察に来させたり、今回は警察側の一工夫が多かった。逆にセラピスト側も殺害方法を知らないほうがいいから何でもいいと答えたり、それなりに慎重な局面もあったが、警察が上回ったようだ。