法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ホーンテッド・マンション』

 夫婦でちいさな不動産をいとなむジムは、仕事ばかり優先して子供たちを後回しにしていた。妻のサラに責められ、ジムは仕事をことわって家族旅行にいくことに決める。しかし大口契約になりそうな電話がかかってきたため、豪邸へ少し寄り道することに……


 ディズニーランドのお化け屋敷をディズニー自身が実写映画化した、一時間半に満たない2003年の米国映画。2023年にリメイク映画が公開された。

 呪われた家*1にたちよる定番のホラー映画だが、がめつい不動産が主人公なのでずっと恐れ知らずにふるまう。次々におそいかかる異変に対するジム役エディ・マーフィのとぎれない軽口が好きな人には楽しいホラーコメディではないだろうか。
 黒人一家が危機にさいして絆をとりもどし、一方で幽霊側も多くが個人としては良心をもっていて、歴史をとおして人種差別への抵抗と融和への希望を描いていく。ファミリー映画としての後味の良さがあった。


 しかし子供が序盤に感じた恐怖を克服するドラマは定番すぎて工夫がないし、アドバイスしてくれるキャラクターにしたがってアイテムをあつめていく展開は一本道のゲームのよう。すべての原因がたったひとりの思惑によるものというのもひょうしぬけ。
 残念ながら恐怖演出は力を入れておらず、そもそも幽霊が主人公たちにはっきり敵意をむける場面も少ない。合成の物量は多いが合成とあからさまな使用法だし、当時としては最新の3DCGを活用したVFXもゲームのように粗い*2。屋敷を2階まで実物大のセットを建てて屋根は3DCGを合成したり、地味なVFXの活用もあるのだが。
 ただ中盤の生ける屍はリック・ベイカーが腕をふるっていて、醜くも恐ろしげな演出もしっかりしていて楽しめた。映像ソフト収録のメイキングによると最初はディズニーらしい恐ろしくないデザインにしたが却下されたという。実際にコメディ描写がつづいて単調に感じたところで良いアクセントとなっていた。

*1:日本におけるマンションは高級なアパートを指す言葉なので、邦題は『ホーンテッド・キャッスル』などにするべきだったと思う。キャッスルでも城のニュアンスがあるが、この映画に登場する邸宅は歴史があるので違和感は少ないはず。

*2:ソニー・ピクチャーズが参加していたりする。