法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『アラジン』

海をいく個人商船で、子供たちにせがまれた父親が歌いはじめる。それはアラジンと、魔法のランプをめぐる奇想天外な物語だった……


ガイ・リッチー監督による2019年のミュージカルファンタジー。ディズニー長編アニメをディズニー自身が実写化した作品群のひとつ。

いかにもディズニー映画らしく、時代の変化にあわせて脇役にも救いを用意し、制作リソースに余裕を感じさせるリッチな作品。
特に映画史を変えるような斬新さはないが、枯れた技術を適切にバランスよく配分している。


アラジンのパルクールはミュージカルにあわせてテンポ良く、しかし見せ場だからと長々とは映さず、さらっと必要最低限ですませる。必要に応じて合成もつかっているようだ。セットとVFXを組み合わせた王国も広々として、どの場面を切りとっても手抜きを感じさせない。
VFXで動物をリアルに描写し、演技の不自然さを感じさせないし、CG臭さもない*1。多様な動物VFXは実写リメイク次作の『ライオンキング』への助走でもあるのだろう。
巨大な鷲の追跡で市街地が破壊されていく情景も、怪獣映画のような興奮がありつつ最低限で終わり、あくまでアラジンのドラマを支える役割にとどめている。
ウィル・スミスが演じるランプの魔人は、3DCGで身体を置きかえながらアニメチックな動きで合成っぽく見せる。その洒落っ気もまた余裕を感じさせる。


先に書いたように斬新さはないし、千夜一夜物語とはまた違った枠物語ゆえの結末も予想の範囲内ではある。
しかし見せ場を散りばめ悪目立ちさせず、調和のとれた大衆的な娯楽としてこれはこれで正解なのだろう。

*1:十年の違いがあるとはいえ、『カムイ外伝』の余裕のなさと対照的だ。 hokke-ookami.hatenablog.com