スキアヘッドはアンダーグエナジーの化身と称してダークヘッドとなり、傷つけたカイゼリン・アンダーグをつれてアンダーグ帝国へ去る。プリキュアたちは突入するが、それはダークヘッドの意図したことだった……
金月龍之介シリーズ構成の脚本に、小川孝治シリーズディレクターの演出。中核スタッフですべての真相の開示と決戦を描く。
さらに昨年のシリーズ集大成『映画プリキュアオールスターズF』でキャラクターデザインとして活躍した板岡錦が作画監督と原画で参加。他に森田岳士もひさしぶりに原画で参加。
まず前半は、ダークヘッドがこれまで拒絶してきた説明をはじめることが不自然だった。味方だったカイゼリンに対する説明でもあるところは敵との対話を拒絶した過去と違うが、説明のなかでカイゼリンへの愛を嘘と明かしているので、やはりわざわざ説明する意味を感じない。愚かな教え子として愛しているという嘘を自分自身で信じながら傷つけるドラマのほうが良かった気がする。
そもそもスキアヘッドが嘘をついていることをショッキングに描きたいなら、1年間をとおしてスキアヘッドにカイゼリンへの愛をノルマとして語らせ、視聴者に印象づけるべきだったと思う。カイゼリンの姿をなかなか見せなかった構成上の意味を感じない。その説明を聞くプリキュアも棒立ちが目立った。
しかし後半になり、プリキュアのアンダーグ帝国突入からは最終決戦らしく動きはじめ、キュアスカイとキュアプリズムふたりだけになったあたりから繊細な表情を作画するようになる。そして罠にかかったキュアスカイの変貌した姿から、今作でトップクラスに良好なアクション作画を楽しめた。
そのキュアスカイの、いわゆる闇堕ちした姿には驚いた。
もちろん他のアニメなら子供向けでも少なくないし、プリキュアでも敵がそうだった『ハピネスチャージプリキュア!』などはあるが、主人公側のプリキュアではきわめて珍しい。
おそらく2005年公開のシリーズ映画2作目『映画ふたりはプリキュアMaxHeart2 雪空のともだち』で、主人公コンビがともに洗脳されて戦いあって以来だ。
たぶん最初から味方のプリキュアが闇堕ちしたのはTVアニメでは初だと思うし、その特別さを感じさせる映像にはなっていた。
そこからヒーローとして強さをもとめることが一面では問題であることも描けたし、あえて攻撃も防御もせずキュアスカイの突進を自制させたキュアプリズムの姿もいい。
作品を主導するスタッフが手がけたエピソードとして、このような「ヒーロー」の物語を描きたかったのだとは感じられたし、それだけの完成度はあった。
ただ最終回が近いためか、残念ながら今回の結末までに闇堕ちから復帰してしまい、傷つけられながら相手を信じるドラマを描くまでにはいたらなかった。
ここ数回は独立した長編ストーリーのような時間配分で、それこそ劇場版ならばこれでもいいが、せっかくTVで1年間かけながらドラマの基礎が蓄積できていない。
小川孝治が少し前にシリーズディレクターをつとめて金月龍之介も脚本家として参加した『ゲゲゲの鬼太郎』6期は、一話完結エピソードを蓄積しながら連続ストーリーへの移行も自然だった。その経験があるのに今作はうまくいっていないように見える。
せめてカイゼリンもふくめてアンダーグ自体が悪いわけではないと示すように、復帰したキュアスカイの意匠に闇堕ち時のアイテムを残しても良かったと思ったが。商品展開の関係で難しいのだろうか。