小型女性ロボットを戦わせる近未来のホビーを題材にした、CLAMPの漫画『ANGELIC LAYER』を錦織博監督で2001年にTVアニメ化。大河内一楼の初シリーズ構成作品でもある。
ボンズが元請けで制作した初の地上波TVアニメで*1、小型ロボットアクションが毎回のように展開されるが、映像は安定を重視していて作画アニメ感はない。とはいえ総作画監督制でもないのに当時ここまでキャラクター作画のブレが少ないTVアニメは少なかったとは思う。
アクションは第15話の近藤高光参加回のアクションがちょっと良かったくらい。第14話のオムレツも一瞬だがひっくり返す時の柔らかさ、当時としては突出して美味しそうな色指定は良かったか。全体としてアクションは村木コンテ、日常は増井コンテ回が良かったくらいで、それも良くも悪くも突出した回があるというわけではない。
黄瀬和哉の一人原画のED2は、繊細な描線で良い雰囲気だが静止画。米たにヨシトモ絵コンテのED1は、とおりすぎる知人たちが車窓に反射して、さらにその全体がモニター映像だというシチュエーションのしかけは良かったかな。
絵も話も原作の繊細さは良くも悪くも薄くなって、健全な少年漫画っぽさがある。アニメでは医療技術のためにエンジェリックレイヤーがつくられたという設定を前面に出す。そこで母親が主人公とわかれたのは自身の障害を治すためでもあったと説明することで、ぐっとSFとして設定の厚みと行動の説得力が増した。
主人公の同性の友人が主人公をお嫁さんにしたいと序盤で語って、女の子同士はお嫁さんになれないと主人公が否定した会話は、悪い意味で時代を感じさせた。いや放映と同年にオランダが世界初の同性婚法制化をおこなったことを思えば、SFとして未来予想が弱いといっていい*2。
一方、原作でも微妙に百合っぽかった鳩子という幼稚園児が、1クール目まではあくまで競技における先輩にとどまっていたが、ついに第16話で主人公への重い想いをもらしたのは良かった。はっきり恋愛感情というわけではないが、主人公をもっともよく知る者がセコンドにふさわしいと主人公に説明しただけで、自分が選ばれて当然と思って準備している彼女面がかわいらしい。
その彼女面エピソードでゲームの勝者に主人公のキスがプレゼントされるという話に、王子様系女子が女性からキスされても嬉しくないとコメントして周囲に驚かれる一幕もあったが、その価値観へ叛逆するように最終回で鳩子が主人公へごほうびとしてキスをする。異常さゆえの耽美さのあらわれとして同性愛を描いているCLAMPと違って、ひとつの思慕のありようとして同性愛を位置づけていったところが原作よりも時代をこえて通用するドラマとなっていた。