法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ウルトラミラクルラブストーリー』

 子供のような精神の水木陽人が、青森の田舎で稚拙な無農薬栽培をしていた。そんな田舎にもどってきた神泉町子が幼稚園につとめはじめる。上泉は事故死した恋人の行方不明になった頭部を探しているという。そして水木が神泉にひとめぼれして、見当はずれの行動をはじめるが……


 2009年の日本映画。横浜聡子監督がオリジナル脚本も担当した、初商業作品にあたる。全編津軽弁で青森ロケというふれこみだが、東京から来た神泉は共通語を話す。

 公開時は難解と評価されたらしいが、知的障碍者や田舎の純朴な青年に聖性を見いだす内容はステレオタイプといっていい。たぶん2009年の時点でも批判があったのではないか。『おもひでぽろぽろ』ですら田舎の美化に批判があったのに、障碍者の美化をかさねたとなると、むしろ安易といっていい。
 実のところ理解が難しいのは津軽弁のきつさに台詞の意味がとりにくいところくらいで、それもDVDで字幕表示しながら視聴すると漢字まじりなので内容の見当をつけやすい。
 ただ、前半の時点でも「農薬」をめぐる多義的な描写は悪くなかった。くわえて後半になってから、首のない男と青年が会話をするシュールなVFX描写があり、それは他の誰も知らない青年の主観なので、曲がりなりにも障碍者側の主体性が描かれた良さはあった。最終的にヒロインも無茶苦茶な行動をとるので、青年にばかり異常さを背負わせるドラマにもギリギリなってない。