法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ちょびっツ』雑多な感想

 女性型パソコンが普及した世界の青年と無機物の不思議な恋愛を描く。CLAMPの同名漫画を、連載終了直前の2002年にTVアニメ化した。

 浅香守生監督にマッドハウス制作という『カードキャプターさくら』を成功させた陣営で、映像は当時としては安定している。
 OPも、よく見ると止め絵が多いが、先進的なデジタル技術の活用で主題歌によくあった映像に見える。このころの北久保弘之は職人でありつつ才気ほとばしっていた。『劇場版ハイランダー』では川尻作品にしては簡素に感じた阿部恒のキャラクターデザインも、TVアニメサイズならば描きこまれた頭髪もあって見ごたえある。


 物語については、CLAMP初の男性漫画誌連載とはいえセクシャル描写にてらいがなさすぎて、逆に女性漫画家ユニットらしい作品と感じた。幼い少女の年長男性への思慕を迷いなく美しいものとして描いているのも女性作家っぽい。パソコンへの恋愛感情をふくめ、男性作家だと自身の欲望に直結しすぎかねないため、どうしてもブレーキをかけることが多いと思う。
 DVD第8巻ブックレットのインタビューによると、漫画のアイデアは連載の十年くらい前につくっていて、当時のUIが不親切すぎるDOS-V系のパソコンに対して親切なパソコンがほしいと思ったのがきっかけだとか。そしてTVアニメが動き出したのは原作が1巻くらいしか出ていないころで、放映後半からはアニメオリジナル展開になることが最初から決まっていたが、連載中の描写を絵コンテ段階でスタッフが追加することで終盤まで原作にそった内容になったという。結果として最終回1話前に多くの設定開示をおこなって終盤があわただしくなった感はある。

 また、原作の絵は簡素だが、漫画を読みなれない読者が多い青年誌なので意識的に情報量をさげて見やすくしたとか。おかげで先述した頭髪の量はともかく、当時のアニメでも原作の絵柄を再現できている。
 基本的にパソコンの人間への好意はプログラムによるものと位置づけているが、ヒロインパソコンの選択が異変をもたらしたことを最終回で暗示する。それを表現するため、後半に登場した男女パソコンの描写を活用した構成がうまい。その場に人間がいないからこそ、パソコンの見せた感情が人間のための演技や模倣ではなく、対等な相手に対するものとわかる。