法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

2016年冬春TVアニメ各作品について簡単な感想

全話を視聴して完結した作品の一部を、五十音順で。

あんハピ♪

1クールで起承転結のある物語を完結させようとして、無理にもりあげて空回りしている感があった。不幸をのりこえる動機が子供側にないから、乗りこえさせる教師側に物語の重心が移ってしまう。不幸とつきあうというテーマからしても、日々を何となくすごしていく姿を描くだけで良かったのでは。

うさかめ

てーきゅう』のスタッフによる同一世界観のショートアニメなのに、普通に部活物百合アニメだった。パステル調とも水彩画調ともつかない映像表現がおもしろい。

宇宙パトロールルル子

パッケージングはいいけれど、基本はいつものトリガー作品。はげしいアクションを見せ場にしているようで、絶叫する台詞にたよって物語を動かしている。でも「プロット未監修 吉成曜」は笑った。

キズナイーバー

トリガー制作なおかげか、全話が岡田麿里脚本のわりに、物語のトゲトゲしさが適度に丸まって見やすかった。ただ、ドラマを作りだすために設定があるという作為が露骨なのと、結論があたりまえすぎて飛躍がなかったのが残念。

くまみこ

キネマシトラス作品で近いのは『ゆゆ式』ではなく『ブラック・ブレット』。地獄のような田舎の描写が毎回のように展開され、しかし都会でも人間関係の地獄からは逃れられないとダメ押しする最終回がすごかった。明確な一貫性があって、これはこれで正しい。

三者三葉

このジャンルにおいて、キャラクターを誇張しつづけるのではなく、設定よりも常識人な側面を見せていくとこが興味深い。あまりベタベタしていない見やすさがある。EDに入る時の口上の口調、特に「胃袋ブラックホール」が好き。

少年メイド

「メイド」という言葉を使いながら女装はさせない謎。“いい話”に徹しているようで、金持ちの青年が幼い少年を“自発的”に利用している関係も気にかかる。映像は安定しているので文句なく見られたが、いっそ性的サービスに徹したほうが見やすかったかも。

ジョーカー・ゲーム

古典的トリックを、使用する枠組みや意図で新鮮味を出していく原作をアニメ化。あまり激しいアクションはないし、リアリティのラインから考えても、紙芝居のような映像化で良かった気はする。それでも、あの時代の日本の情報機関をモチーフにして、この時代に国家や組織との距離をたもったまま最後までアニメ化できたのは良かった。

聖戦ケルベロス 竜刻のファタリテ

主人公が弱すぎることでトラブルが発生したり敵につかまったりして、それで物語がよどみなく動いていく。ストレスがたまるはずの愚行が笑いのカタルシスを生む、コロンブスの卵のような作劇手法。なかなか真似はできないが、それゆえ他に類を見ない作品になった。好きだ。

テラフォーマーズ リベンジ

作品の売りとなる出オチが使えなくなった後にどうするのかと思ったが、ラブコメっぽい描写を増やしてシリアス度を抑えたのは悪くなかった。最終回、うつのみやさとるデザインでモブを作画する出オチっぷりも、予想外の楽しさではあったし、原作初期のような強烈な異化効果が感じられた。

ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?

ネットゲームを最初から最後まで趣味としてメインにすえた、初めてのTVアニメだと思う。もちろん誇張はあるが、インターネットを美化も悪魔化もしないドラマとして貴重で良かった。「猫姫」のネカマ設定をつづければ、もっと終盤まで楽しめただろうことが惜しい。

ハイスクール・フリート

3DCG艦船がメインかと思わせて、手描きメカ作画や爆発エフェクト作画、さらに波にも手描き作画を使ったアニメーションは楽しかった。ただ、コメディからシリアスへの転換で驚かそうとしていたらしいのに、わりと早めに誤解がとけて、それなのに航行をつづけた構成は疑問。

ふらいんぐうぃっち

古びてはいても汚れてなくて、他人との関係が近すぎず、田舎というより裕福な郊外のよう。ゆえに淡白だが心地よいアニメではあったし、それを頭身の高い作画で見せた物珍しさはあった。OPのサビから監督クレジットまでが見ていて楽しい。

文豪ストレイドッグス

原作の問題だと思うが、太宰治の後輩が芥川龍之介だったり、元ネタの作家とキャラクターの関係が意味不明なところがそこここに。あと、ミステリにしては細部への注目や推理の飛躍に欠けて、榎戸洋司脚本にしては理屈にたよりすぎ。だから推理に徹した江戸川乱歩回と、献身と救済に徹した泉鏡花回が良かった。

僕のヒーローアカデミア

主人公が無能力でがんばる作品かと序盤でかんちがいしたため、なかなか物語にのれなかった。それでも群像劇として楽しむ心の準備ができて、作画アニメとしても盛りあがった瞬間に終了したのが残念。MBS日曜5時枠なのに1期目が1クールで終わりとは知らなかった。

迷家-マヨイガ-

無駄のない『無限のリヴァイアス』といった感じで、単調な『ガールズ&パンツァー』より中だるみしない。コンセプトの基礎作りをしっかりする監督と、コンセプトを拡張していくシリーズ構成という作風の組みあわせが良かった。あとは、両者とも悪ふざけにブレーキをかけない作風なので、そこをコントロールできるスタッフがいれば完璧か。