「カナダ空港税関」は、例によって他国とくらべて運用が比較的にフレキシブル。特に最後の、「彼女と暮らしたいとやってきたスロバキア人男性」が印象的だった。
観光ビザで就労する可能性を問いつめ、このまま国外退去となってしばらく入国禁止にされるか、自主的に書類不備に気づいたことにして帰国して就労ビザをとるかの二択を提示。さらに自主帰国を選んだ男性に対して、帰国できる航空機がなくなったからと一日滞在して恋人と会うことを許可する。
入管法がさらなる改悪をおこなったばかりの日本で視聴することに、悔しさや苦しさを感じずにいられなかった。もちろん番組が提示した事例は一部の一側面ということは理解しているが、象徴的な光景であることはたしかだろう。
「作家、本当のJ.T.リロイ」は、少年が実体験を描いたと称する男娼小説『サラ、いつわりの祈り』が出版され、映画化され、フィクションとあばかれるまでを作者視点で映したドキュメンタリ。
同時代に報道でくわしく知った事件なので面白味がないかと思いきや、騙された側ではなく騙した側の時系列で説明されたことで異なる印象が生まれる。ついつい少年愛小説を実話のように売りこんでしまった心の動き、その愚かさ自体が意外と小市民的でいてドラマチックだった。
そして公式サイトには記載がないが、最後にカタールでひらかれたサッカーW杯の汚職についてのドキュメンタリが紹介された。W杯を熱心に応援していたというゲストがいる回で、あえてこのドキュメンタリをぶつけたことには感心する。
W杯の開催には不利なはずの灼熱のカタール。開催地の選考にあたってとてつもない金額の接待がおこなわれたこと、それがカタールにかぎらず常態化していたことが顔出し証言で指摘され、複数の有力者が逮捕されたことも明かされる。
しかし最終的に冬開催となり空調も設置して成功に終わったとまとめていたが、本当にそのようなドキュメンタリだったのだろうか。番組の編集でニュアンスを変えていないだろうか。せめてスタジオで2020年の東京五輪とかさねてほしかったものだが……