法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『OVA レイアース』

 卒業を一週間後にひかえた女子中学生の光と海と風。突如として異世界から災厄が襲いかかり、三人は巨大な魔神の力でたちむかうことになるが……


 CLAMPの少女漫画『魔法騎士レイアース』を原作として、1997年に販売された全3章のOVA。TV版と同じ平野俊貴*1監督と制作会社だが、キャラクターデザイナーや脚本は交代。

 連載30周年を記念して原作の公式twitterアカウントが開設されたので、DVD化こそされていても配信されたことがないOVAの感想を書いておく。
なぜ今? マンガ『魔法騎士レイアース』公式Xアカウントが開設 「最新情報を発信してまいります」(1/2 ページ) - ねとらぼ
 とはいえOVAはTV版よりも原作とは内容が異なる。まず異世界召喚だった原作やTV版とは違って、異世界から東京へ脅威が襲ってくる設定。そこからビル街で巨大戦がおこなわれるシチュエーションが展開され、対する少女は魔神の操縦時に全裸になる。筆文字のタイトルなども、CLAMPらしさより平野作品らしさがある。原作を素材にした『戦え!!イクサー1』という印象*2

 ドラマとして見ると、原作やTVアニメ版から主人公の年齢をひとつあげて、卒業間近の中学三年生にしたことで、別離の不安をかかえた繊細なドラマが生まれている。1話の序盤だけだが後輩にしたわれている描写などもあり、やはり『戦え!!イクサー1』のような百合アニメっぽさもある。やっていることはファンタジーロボバトルだが。


 映像面では充実。平野コンテらしく巨大感の演出は円熟の極みにたっしていて、対比物の少ない空港ですらサイズに違和感がない。エフェクト作画のディテールは同時代とくらべてやや遅れているが、急速にアップデートされた1990年代において極端に悪いわけではない。
 各章が40分以上あるためか、制作リソースが足りなそうな止め絵や映像の使いまわしもあるし、異世界との融合で街を無人化させるような省力もあるが、全体をとおして作画は安定している。門之園恵美のキャラクターデザインも、睫毛を太い一本線で表現したりと癖はあるが、繊細な頭髪の作画がうつくしい。

*1:ただしTV版の旧名義の平野俊弘から改名している。

*2:脚本の中村学は続編の『冒険!イクサー3』に参加。