元傭兵が傷つき、病院にかつぎこまれた。元傭兵は殺人事件の容疑者としてあつかわれるが、主治医を人質にして脱出。それと連携するように主治医の妻は元傭兵の兄弟分に誘拐され、事件を追跡する官憲も複数の派閥にわかれて動き、事態は混迷をきわめていく……
2014年の韓国映画。2010年のフランス映画『この愛のために撃て』*1のリメイクで、他に2019年の米国映画『ポイント・ブランク この愛のために撃て』というリメイクもある。
暴力的に追跡する敵集団の正体が不明のまま、罠にかけられた人々が良かれと思って独自行動をおこない、あらすじで書いたように状況が錯綜していく。
約2時間の映画のちょうど中間点で複数の動きが一点に収束し、たったひとつのきっかけから構図が整理されるシナリオが原典通りだとしても巧妙だ。しかもそこで物語が終わらず、悪意がさらにむきだしに動きだして、サスペンスからアクションへとジャンルが派手さを増していった。
女性刑事ふたりのシスターフッドがレズビアン映画を思わせたり、人質としてつれさられた妊娠女性が薄幸のようで意外とアグレッシブだったり、モダンな韓国映画らしい力強い女性像が良い。
作中で最強の元傭兵が発端で重傷を負い、映画のなかで少しずつ回復する。それゆえ相手が強くなくても強くなっても緊張感ある互角の戦いが最初から最後までくりひろげられる。そんなアクション映画としてのギミックも良かった。インターネットのレビューを見ると、原作のフランス映画では巻きこまれた医師がアクションでも奮闘するらしく、そこが自然になるよう活躍する人物をずらしたのだろうか。
手足が不自由な状態でのアクションはカットを細かく割ってごまかしている感じはあるが、どれも水準はクリアしている。ただ、前半で逃げ出す病院のふきぬけ構造は実際の建物をロケしたのだと思うが、まるでゲームのように作り物めいていて、不自然すぎて逆に笑った。