法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』メルヘンランド入場券/自家用衛星を打ち上げよう

「メルヘンランド入場券」は、のび太が物置のかたづけをしていて絵本に目を止める。メルヘンの世界を楽しんでいた幼少期をなつかしがっていると……
 後期原作を三宅綱太郎コンテで、オチをのぞいてシチュエーションの楽しさだけを描いた原作の良さをていねいに映像化。
 アニメオリジナル描写は、半端に危機を追加するのではなく、メルヘンなイベントをキャラクターにそって追加するだけ。その追加描写にはメルヘンランドの広さと多様性を強調する部分も複数あり、おだやかなテーマパークの楽しさが実感できる。だからこそ、特にトラブルもなく夢見心地で終わった心地よさに、子供らしい時間が終わるという表裏一体のさびしさまで感じられた。


「自家用衛星を打ち上げよう」は、落下して燃える人工衛星のび太はUFOと考えたため、ジャイアンたちに笑われる。帰宅したのび太ドラえもん人工衛星について教えてもらい……
 中期原作を2005年リニューアル以降に初アニメ化。ただし秘密道具はすでにリメイク映画版の『のび太の大魔境』や「ツバメののび太*1で映像化ずみ。
 現在の人工衛星と衝突する描写からアニメオリジナル展開に移行。前半で原作どおり人工衛星の数を説明するドラえもんの台詞が伏線となり、偶然で衝突することの説得力がある。衝突する描写にちょっと絵コンテに『プラネテス』っぽさを感じたりも。
 そこから既存の打ち上げ衛星を利用してジャイアンたちを足止めしたり、別の衛星をうちあげて必死に回復するドラえもんが描かれていく。衛星映像をつかったリアルタイムの追跡描写も楽しく、原作をふまえた上でアクションサスペンスの緊迫感と爽快感が追加されていた。
 原作にそった前半部分も、住宅街をロケットが飛んでいく描写や野比家のまわりだけ陽がさしている様子をロングショットで映して、地球圏をめぐる物語にそったスケール感があった。


「完全しゅうせいき」が今回のドラドラMiniシアター。森山瑠潮作画でこれまでになく原作の絵柄を再現した作画に、学生時代の自主制作アニメ*2に感じたパスティーシュのうまさがある。のび太が友人を美麗に描いた絵画の絵柄変更も原作以上で、アニメーターの特技をうまく引き出して面白味につなげていた。