法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『HiGH&LOW THE RED RAIN』

バイクを乗り回し、危険な運び屋をつづける雨宮兄弟。姿を消した長兄を追って、2人は九龍グループの一角の陰謀と立ちむかうことに……


EXILEによる不良アクション映像企画『HiGH & LOW』のスピンオフとして2016年に公開された映画2作目。監督は『極道兵器』などの山口雄大
https://high-low.jp/movies/theredrain/

映画1作目は、良くも悪くもシリーズの見どころを凝縮して、5チームが協力して街を守るイベント作品であった。
『HiGH&LOW THE MOVIE』 - 法華狼の日記
対して、このスピンオフは主人公2人の視点にしぼって、個人的な動機から社会悪に立ちむかう展開へつなげていく。
良くも悪くも普通のB級ノワールとなり、ややドラマパートの凡庸さに刺激不足を感じつつ、ぐっと映画らしく単独でまとまった。


物語は最初から最後まで定型をふまえているだけだが、だからこそ邦画としては破格のアクションと雨宮兄弟のボケツッコミを素直に楽しめる。
雨宮兄弟3人のうち2人で、マヌケなボケとカッコつけなボケを自覚的に描写しているから、いかにも『HiGH & LOW』らしいデフォルメされた世界観でも、ちゃんとシリアスなドラマが成立するくらいのリアリティはある。
長兄をさがしてまわる雨宮兄弟という構図で、本編の5チームとの回想を自然に物語に組みこめて、かつ5チームのドラマで本筋を乱されないところもうまい。このスピンオフ単独で主人公2人が目標をもって達成するまでの物語が、きちんと完結している。


アクションは、本編で5チームにたった2人が対等にわたりあえるだけの雨宮兄弟の強さを描いていく。
ドラマの蓄積の上にアクションを凝縮できた1作目と違って、まったく異なる舞台を設定しなおしながら、画面に予算の不足を感じさせない。いくつもあるカーチェイスやガンアクションで、殺風景に感じる場面がない。最後の大規模なカーチェイスは草原をつっきる道路でおこなわれるが、ちゃんと周囲に第三者の自動車を走らせているので、それを抜き去る運転がスリリングだ。
さすがに植物の雰囲気などから国内ロケではなさそうな気配を感じていると、事実としてエンディングにフィリピンロケしたことや、外国のスタッフを使ったことが明記されていた。しかしフィリピンで外注をしながら撮影したのだとしても、動ける日本の俳優を外国まで呼び集めることは、それはそれで大変なことだろう。
何より、ガンアクションで銃撃により物品が破壊される描写を、手をぬかず徹底していることが素晴らしい。コンクリートを拳銃で撃てば火花が飛び、機関銃で撃てば粉砕される。たぶん必ずしもリアルではない。だが、この映画ではそういう基準で銃が強いというルールを徹底することで、絵が派手なだけでないリアリティが生まれている。そして、それほど銃が強力な武器と印象づけられたからこそ、徒手空拳で勝利する雨宮兄弟の「ゼロレンジコンバット」の凄味も説得力をもつ。