法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

制作開始が報じられてから公開するまで最も長くかかった商業アニメ映画は何だろう?

 2023年7月に『機動戦士ガンダムSEED』の劇場版、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が2024年1月に公開されることが報じられ、予告映像も流れた。
「劇場版ガンダムSEED」C.E.75を舞台にした完全新作が24年1月26日公開決定! ティザービジュアル&PV公開 | アニメ!アニメ!

本来はテレビシリーズ直後にお届けするはずでしたが、長く皆様をお待たせすることになってしまい、申し訳ありませんでした。

20年という時間はアニメーションの作り方だけでなく、参加するスタッフも大きく変化しました。『ガンダムSEED』を見ていた人たちが新しいスタッフとして参加して、旧スタッフは年齢だけで言えば、もはやベテランと言えてしまいます。

 TVアニメ2期『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』が2005年に最終回をむかえた直後から劇場版の制作が報じられていたが、シリーズ構成をつとめて劇場版も担当する予定の脚本家が亡くなったりもして、2021年まで中断していたらしい。その間、TVアニメをハイビジョン用に映像をさしかえたリマスターがつくられていた。
 TVアニメ1期から数えるとちょうど20年目だが、制作発表は2006年なかばだったので、公開までかかった期間は16年から17年といったところか。


 他に、劇場版の制作が発表されながら公開されないでいる有名なアニメ映画というと、公式サイトに公開時期未定のお詫びが掲載されている『ユーリ!!! on ICE 劇場版 : ICE ADOLESCENCE』がある。
yurionice-movie.com
 こちらは2017年に制作発表され、2019年に公開される予定だったらしいが、2023年の現在まで大きな動きは見られない。その間に同じキャラクターデザインと制作会社MAPPAでTVアニメ『呪術廻戦』が放映され、劇場版も公開されている。
 また、同じく2017年にTVアニメ放映から劇場版の制作発表もされた『活撃 刀剣乱舞』も、2023年の現在まで公開はされてない。2021年や2022年に新規映像も公開されたが、ほとんど静止画に音楽をつけただけ。
katsugeki-touken.com
 どちらも来年に公開されると仮定すると、7年くらいなので意外と長くはない。
 今年に公開された宮崎駿最新作『君たちはどう生きるか』も制作開始は2017年に発表されていたので、現在のアニメ映画にもとめられるクオリティからすると中断がなくても5年くらいはかかるものだ。


 知るかぎりで実際に公開までこぎつけたアニメ映画では、1992年に完成しながら2014年にミニシアターで公開された『ちびねこトムの大冒険』がある。
chibinekotom.com
 これは劇場公開されず封印されていたパターンで、厳密にはCSで放映されていたし、地方の上映会でかけられたことがあった。制作開始がいつ一般に公表されたのかはわからないし*1、公開された時期を判断することも難しい。
 制作が中断している長さでいえば、2007年ごろに制作が発表されながら2010年に監督が亡くなり、いったん制作続行を公表しながら2011年に断念した『夢みる機械』もある。
hokke-ookami.hatenablog.com
 それでも2017年の公開を目指して2018年ごろには半分以上の映像が完成したらしいが、制作会社の社長でもあったプロデューサーが断念を表明して現在に至る。
今敏監督の未完の遺作「夢みる機械」を丸山プロデューサーと平沢進が語ったインタビュー公開中 - GIGAZINE
 もし『夢みる機械』が再々始動して公開にこぎつけられれば、おそらく『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』よりも公開まで時間がかかったアニメ映画になるだろう。


 時間をかけて制作する個人制作の短編アニメならば、ユーリ・ノルシュテインの『外套』など多数ある。しかし商業的なアニメ作品は、そもそも制作を中断したまま企画を維持することが原理的に難しい。
 いろいろ考えたが、制作開始が報じられてから公開するまでが最も長いといえる商業アニメ映画は思いつかなかった*2手塚治虫の半分趣味的なアニメ映画で20年以上かけた作品が存在しそうな気もするが、簡単にしらべたかぎりでは見つからなかった。

*1:文化庁の助成がおこなわれたことは1993年に公開されている。

*2:実写映画ならば制作中止がドキュメンタリー映画化された『テリー・ギリアムドン・キホーテ』を思いついたが、もっと無名な映画や、意外と制作発表が早い作品が存在しそうな気もするので、やはり確信はできない。