法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』仙人らくらくコース/悪運ダイヤ

ドラえもんの設定をめぐるクイズがちょっと長めだったのは、来週が誕生日SPという関係もあってだろうか。


「仙人らくらくコース」は、たくさんの宿題を出されてキャンプに行けなかったのび太が、世を捨てて仙人の修行をはじめる。しかし気分を味わうだけの秘密道具でも、のび太にはつらくて……
2007年に映像化した後期短編をリメイク。脚本は佐藤大で、良くも悪くも物語展開は原作に忠実。せっかく夏休み最終日の放映なのだから、それにあわせた内容にアレンジしても良さそうなところ、教室で宿題を出されたという工夫のなさ。
他に仙人修行の種類を原作より多くしていたが、岩乗り等のどれも仙人っぽく感じられず、微妙に思った。ひょっとしたら元ネタがあるのかもしれないが、それならそうと劇中で説明してほしかったところ。
ちなみに仙人が神通力を失うという説話にもとづくオチは、2007年はのび太と仙人だけが見て、今回は原作通り仙人だけが見える。原作漫画では読者にも見えていたが、TVアニメでは視聴者は見れないことは前回も今回も同じ。


「悪運ダイヤ」は、いつもいつも嫌な目にあうのび太のため、不運を他人になすりつける秘密道具が登場。さっそく誰かになすりつけようとするが、適当な人物が出てこず悩む……
2006年に映像化した短編をリメイク。脚本が大野木寛から伊藤公志に、コンテは鈴木孝義から寺本幸代にかわったが、演出の三宅綱太觔と作画監督の嶋津郁雄は2006年と同じ。
全体としてキャラクターが次々とひどいめにあっていくエピソードだが、秘密道具が出てからは自業自得なしっぺ返しだけになる。その一線が今回のアニメ化におけるアレンジでも守られているので、暴力的なストーリーなのに後味が悪くない。
物語がほぼ原作に忠実で、作画も整っているからこそ、演出の工夫や遊びもわかりやすい。のび太がひどいめにあう場面では、直接描写をほとんど入れず、遠景と音声で視聴者に想像させる。悪運ダイヤの押しつけに成功したとたんに不幸にあわなくなるのび太を、横から映した機械的なカメラワークと、アニメオリジナルでゴミを拾う老人の淡々とした姿で、平和ぶりを笑えるほど強調する。
細かいアレンジもいい。テストのために頭をなぐるトンカチを巨大にして、それが痛みを増すギャグになると同時に、子供が安易に真似できなくしている。ドラえもんが悪運ダイヤを飲みこむツイストを足して、人間ではないからと顔面がめりこむ原作らしい描写を入れたのも大笑い。