法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』消しゴムでノッペラボウ/つくろう!おざしき水族館

「消しゴムでノッペラボウ」は、五郎という男子が描いた美少年が女子にもてはやされていたが、のび太はそれをオバケと評する。それを知ったジャイアンたちはオバケ屋敷に協力を求めた……
2009年に映像化された初期原作をリメイク*1。コンテ担当は二度目の藤間謙太。
原作どおり、ハッチングでタッチをつけた絵柄がそのままアニメ化。ずっと漫画らしいデフォルメ顔ののび太が、よりリアルな絵を現実にいるはずがないと論評する逆転が楽しい。ただ、アニメの流行にあわせた変化のほうが漫画で意図したギャップになりそうだとも思った。
少し時期より早いが、お化け屋敷の演者となるため顔を妖怪のようにするアニメオリジナル展開を追加。原作どおりののび太の論評を受けた展開でもあり、物語と自然になじんでいる。終わった後で暮れなずむ街をねり歩き、他人を意図せず怖がらせてしまったり、やるべき描写を押さえている。ここで五人分の顔を変えたことで腕に負担がかかったろうし、原作どおり腕にケガをしてもどせないオチに説得力が少し増していることも良かった。
ただ、原作はモノクロの漫画ということもあってごまかせていたが、吸血鬼らしく肌を真っ白に変えたりするまでを鉛筆一本でおこなうなら、何かしらアニメで追加の機能を自然なかたちで見せてほしかったかな。


「つくろう!おざしき水族館」は、海中公園体験を自慢するスネ夫に対し、のび太はどこでもドアを出そうとする。しかし寝ているドラえもんから勝手に出そうとして、別の秘密道具ばかり出る……
2015年にアニメ化*2された中期原作をリメイク。つくしやまコンテ、五月女有作演出、篠塚滉平作画監督。さらに秋山めぐみと共同で、鈴木勤がキャラクター設定で登板という珍しさ。
全体的によく動いて、登場する魚もアニメになじむバランスで精緻に描かれ、映像の良さがそのまま情景の美しさで楽しませる物語を映えさせていた。底に沈んでからもアニメオリジナル描写で深海魚を撮影したり、ダイオウグソクムシに出会ったり。
さらに野比母が来たからとコエカタマリンで原作どおり助けを求めて叫ぶだけだと艇内で反射。ダクトをとおさないと外部に声の文字が出ないアニメオリジナル描写につないだ。そこで浮かんだ文字に気づいた野比母が近づく時に映画っぽいBGMを流して救出の期待をもたせ、おざしき釣り堀に気づかず*3BGMがとぎれるという音響演出も、原作の展開をアニメできわだたせていて良かった。
ジャイアンが待たされて怒るのではなく、コエカタマリンの文章をしずちゃんが読みあげて激怒するというアレンジ。これは原作とアニメのどちらがすぐれているともいえないが、悪くはない。

*1:hokke-ookami.hatenablog.com

*2:hokke-ookami.hatenablog.com

*3:足元をフレームの外に隠して、視聴者にも気づかせなくするコンテも良い。